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「なんだか高そうだな」

「お金なら心配しないで」


 馬車から降りた俺が不安になって言ったら、同じく馬車から降りたジャスミンが俺の前で胸を張った。ポケットから、光り輝く球をだす。


「なんだそれ?」

「魔力水晶よ。ママがつくったものなんだけど。これがあれば、都でも一年くらいは遊んで暮らせるから」

「へえ」


 それでどうやって金を支払うのかは謎だったが、まあ、なんとかするんだろう。


「じゃ、宿に行くか。やっぱり、一階が食堂で、二階で寝るような造りになってて、冒険者に仕事も紹介してるのか?」


 なんとなく訊いたら、ジャスミンが驚いたような顔をした。


「そうだけど。どうして知ってるの?」

「俺たちも、君たちの世界を全く知らないわけじゃないんだ」


 馬車を宿の裏手に停め、俺とジャスミンは、もう眠そうにしているローズをつれて宿に入った。

 宿のなかは酒盛りの真っ最中だった。


「あ、やっぱりこうなるのか」


 食堂と言うより飲み屋だな。旅人や冒険者と、それから、仕事を終えた町の住民たちがジョッキを傾けていた。――服装の違いで、町の住民かそうでないか、俺でも見ていて、なんとなく区別がつく。むこうも俺を見て、黄色い肌だと思っていることだろう。


「そのへんで待っててね」


 ジャスミンに言われ、俺はローズをつれて、食堂の端っこまで行った。ジャスミンが、食堂の奥まで歩いていく。宿をとる手続きをしに行ったらしい。飯は、もう少し後だな。いや、村から持ってきた干し肉と干し野菜が残ってるから、今日の夕飯もそれか。いい加減に飽きたから、違うものが食いたいんだが。


「B」


 都では、米や、うどんや、そばが食えるみたいだから、それを楽しみにしてたんだけど、などと考えていたら、横に立っていたローズが手をひいてきた。


「なんだ?」

「おんぶ」


 見下ろすと、ローズが目をこすりながら言ってくる。あ、これは本当に眠いんだな。町にきて安心して、一気に旅の疲れがでたか。


「ほいよ」

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