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「いただきます。――こういう食事が悪いとは言わないけど、やっぱり米はないんだな」

「ライスなら、都で食べられるわよ。小麦ほどメジャーじゃないけど」

「あそ。じゃ、日本食は都で楽しませてもらうとするか」


 というか、いままでの会話からするに、うどんやそばもありそうだな。やっぱり食い物は故郷の味に限る。ジャスミンも同じようなことを言っていたし。とりあえず、米にありつけるというのはありがたかった。


 なんだか、都に行くのが楽しみになってきている俺がいた。


「ごちそうさま。――さて、と」


 朝食を終え、俺はマーガレットのほうをむいた。マーガレットが不思議そうに俺を見返す。


「食後のお茶か、デザートが必要でしたか? それとも、都へ行く前に心構えを知りたいのでしょうか?」

「あ、そうじゃなくて。えーと、食うもの食ったから、トイレ」

「――あら」


 マーガレットがおかしそうに笑う。悪いな、俺、昨日ここにきて、いきなりナイトゴーレムと喧嘩して、飯食って寝ただけで、だすものをだしてなかったのだ。場所も知らないし。


「これは失礼しました。この部屋をでて、右に行って、突き当たりの扉です」

「そりゃどうも」


 返事をして、俺は居間をでた。言われたとおりに廊下を歩くと、WCと書かれた扉が見えてくる。


「そういえば、WCって、どういう意味なんだろうな?」


 むこうの世界にいたとき、もっと勉強しておけばよかったっけ。独り言でつぶやきながら、俺は扉をあけた。木製だが、一応、洗面所がある。あと、水洗トイレも。ローマ帝国では上下水道が完備されていたと漫画で読んだことがあるが、こちらでもそうらしい。

 あと、もうひとつ、べつの便座みたいなのがあって、小さい噴水が下から上にピュウピュウ水を噴きあげていた。


「――確かに、ウオッシュレットがあるってジャスミンも言ってたっけ」


 それがこれか。――冷静に考えれば、歯を磨くための噴水があるのだ。応用すれば、トイレのウオッシュレットもつくれるだろう。


「日本人が何人もきているって話だったけど、そいつらが、こういう文化を広めたのかな」


 おかげで予想以上に暮らしやすい生活を送れそうだ。俺はリラックスしてだすものをだし、洗うところを洗って、茶色い紙のようなもの――エルフが木を切って紙をつくるとも思えないから、たぶん枯れ葉からつくったんだろう――で、拭くべきところを拭いて、それも流してWCの部屋からでた。


「B、もうすることは終わった? 準備できた?」

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