33
「ほかのナイトゴーレムが、またわたくしたちの村にきたときのために、護衛として使役するのです」
「あ、なるほどね」
そういえば、俺が都へ行っている間、べつのナイトゴーレムがきたらどうするんだと質問したら、何か策があるような返事をしていたっけ。それがこれか。
「もちろん、正規のナイトゴーレムと正面から戦ったら勝つことはできないでしょうが、わたくしたちが逃げるための時間稼ぎにはなってくれるでしょう」
「まあ、リサイクル品なんだから、そのへんは限界があるだろうな。――ところで、昨日まで持っていた、あのでっかい剣はどうしたんだ?」
あれを振りまわすパワーもないとしたら、戦う以前の問題だ。ちょっと心配して訊いたんだが、マーガレットは笑顔のままだった。
「あの大剣は馬車に積みました。あれを都まで持って行けば、暴走したナイトゴーレムが、わたくしたちの村までやってきたことの証拠になりますので」
「あ、そうか。そういうふうに使うわけね。――剣なしで、剣を持ったナイトゴーレムと戦えるのか?」
「真剣白刃どりができるようにプログラムしましたので」
余裕の表情でこたえるマーガレットだった。
「真剣白刃どりか。――まあ、リアルで人間がやるには無理があるだろうけど、マシンなら可能かもな。というか、マーガレットさんすごいねえ」
「私のママって、村で一番魔法がうまいのよ」
俺の横でジャスミンが誇らしげに言う。ほかの住民もマーガレットには敬意を払っていたが、その理由がわかった。マーガレットはなんでも知ってる博士キャラだったわけだ。
「で? 今日、都にむかって俺たちは旅立つわけだけど、それは朝飯を食べてからか?」
さっき投げ捨てた歯ブラシを拾いあげ、俺はマーガレットとジャスミンの顔を交互に見ながら訊いた。ジャスミンが苦笑する。
「もちろん、朝ご飯を食べてからよ。これからしばらく、普段の食事はできなくなるからね。ちゃんと味わっておかないと」
ということで、俺たちは水飲み場から、マーガレットの家まで戻った。料理を手伝うつもりで台所まで行ったら
「男がくるところじゃないから」
こんな返事がきた。このへんは文化の違いだな。仕方がないから居間で少し待っていると、ジャスミンとマーガレットが皿を運んでくる。でてきたのは、昨夜とほぼ同じ食事だった。フィッシュアンドチップス、野菜サラダ、それから食パンみたいなのと、よくわからない肉。イノシシのベーコンか何かだろう。




