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「あの、なんで」
「リサイクル」
ジャスミンに質問しようとしたら、先に説明がきた。そうか。そういえば、そういう世界だったな。
「わたくしが、昨夜のうちに直したのです」
つづいて聞こえたのはマーガレットの声だった。全身ヒビだらけのナイトゴーレムの背後から、そのマーガレットが顔をだす。ナイトゴーレムの横をすり抜けて、俺の前まで歩いてきた。少し誇らしげに背後のナイトゴーレムを指さす。
「昨夜、Bの歓迎会のあと、壊れたナイトゴーレムを再起動させて、必要最低限の修理をして、プログラムを組みなおしました。いま、あのナイトゴーレムは、わたくしたちを守るためだけに行動します」
「へえ」
俺はナイトゴーレムを見あげた。逆に、ナイトゴーレムがこっちを見下ろしてくる。
「仲間って考えると、今度は頼もしく見えてこないこともないな。――わたくしたちって言ってたけど、それはエルフの一族のことか?」
「もちろんです」
「じゃ、俺は? 敵として見られたりしないか?」
「わたくしたちの友達は仲間だと判断するようにプログラムしました」
「そうか。それは安心したよ。――もうひとつ質問。昨日、俺がぶっ壊したことは覚えてるか?」
「それは記録から削除しました。万一覚えていても、復讐が目的で行動はしませんので安心してください」
「なるほどね」
つまり、近づいて触っても大丈夫ってことか。俺はナイトゴーレムのすぐ前まで歩いてみた。ナイトゴーレムは動かない。それにしても、近づくと余計にわかるけど、ボロボロだな。
「必要最低限の修理って言ってたけど、それにしても無茶苦茶じゃないか」
「あなたが壊したのでしょう」
「そりゃそうだけど、だからってこんなヒビだらけじゃ。溶接してくっつけたり――」
と言いかけて、俺は黙った。鉄鋼をどうにかする技術はドワーフの領分である。その方面でエルフが秀でているとは思えないし、そもそもドラゴンの炎でも解けないセラミクス製だ。溶接なんかできるわけがない。
「じゃ、こいつはこれでいいとするか。で? 俺は、このぶっ壊れたナイトゴーレムを都まで運んでいくわけか?」
「いえ、そのナイトゴーレムには、わたくしたちの村を守らせます」
「は?」




