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 席を立ちかけ、あらためて俺はマーガレットに目をむけた。マーガレットも俺に目を合わせる。


「なんでしょう?」

「これは、この村のみんなにも言って欲しいんだけどな。――もし、万が一、この村にハーフエルフがやってきたり、もしくは都でハーフエルフを見かけることがあっても、差別的な態度はとらないでくれ。忌まわしい混血がどうとかなんて言葉はもちろん使って欲しくないけど、それだけの問題じゃない。態度も直してほしいんだ」


 あたりまえのことを言ったつもりだったんだが、マーガレットは表情を変えた。


「それは――」

「俺みたいな獣人類を歓迎したくらいだ。その気になったらそれくらいできるだろう? ハーフエルフは、自分たちエルフと人間の間を取り持つ橋渡し――そういうふうに考えてくれればいいんだ」

「そうは言いますけれども」


 マーガレットの返事には迷いが混ざっていた。


「どうしてそんな難しい顔をしてるんだ? いままでの対応から、あなたがこのエルフの村で、かなり高い地位にいることはわかってる。そのあなたが言えば、下の者は言うことを聞くんじゃないか? 俺たち日本人は差別をしなかった。あなたたちにも、それを見習ってほしいもんだな」

「――わかりました」


 少しして、渋々って感じでマーガレットがうなずいた。


「かなり時間はかかると思いますが、少しずつ、この村を変えていきます」

「そう言ってくれて嬉しいよ」


 俺は笑って見せた。


「さてと、これから俺は寝るけど、どこの部屋に行けばいいんだ?」

「こっちの部屋を綺麗にしておいたから、今日はそこで眠って」


 ジャスミンが立ちあがり、俺の先を歩きだした。三つ隣の部屋を案内される。割と広い部屋のベッドの上に俺は寝ころんだ。


「まさか、こんなことになるとはな」


 なんとなくつぶやいてみる。――俺は異世界に転生するつもりなんてなかった。なぜなら俺は獣人類で、日本でも、すでに異形のものとして見られていたからだ。その俺が異世界にきた。転生ではなくて転移だったが。俺の持つ異形の力は、こちらで役に立つだろうか。

 考えているうちに、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。

 その翌日。


「B! 朝よ!」

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