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「わかってくれたらいい。さて、俺も大体のところはわかった」
俺はテーブルの上の、極薄のフライドポテト――ポテトチップスをお手本にしたんだと思う――つまみながら考えた。これ以上、何か言うことがあるか? あった。
「それで、俺はジャスミンの道案内で、こっちにいるローズもつれて、都に行くんだよな? そのこと自体はひき受けよう。俺だって、都の人間が何をしているのか見たいし」
「それはありがたい話です」
「で、それはいつ行けばいい?」
「明日にでも」
「なるほど。まあ、善は急げと言うしな。いきなりって話でもないか」
俺はうなずいた。
「それはべつにかまわないぞ」
「そう言ってくださって嬉しいです」
「で、都へは、どれくらいで行けるんだ?」
「馬で三日です」
「あ、ごめん」
ソースのついたキャベツをくわえかけ、俺は手をあげた。
「俺、馬に乗ったことがないんだ」
こっちの世界ではみっともない話だったんじゃないかな、と思ったが、これは正直に言うしかない。マーガレットの反応を見たが、特に表情は変わらなかった。
「やはりそうでしたか。こちらにくる日本人は、皆同じことを言います。馬車がありますので安心してください」
「そりゃどうも。で、都へ行くために使う金――路銀って言ったらいいのか」
「私のポケットマネーからだすわ」
これはジャスミンだった。ポケットマネーか。変なところでいろんな言葉が混じってるんだな。
「じゃ、これで本当に、聞くことは何もない、かな」
あらためてキャベツをパリパリやりながら、俺はマーガレットの顔を見た。女神のような美貌が笑みになる。俺が協力してくれて、本当に嬉しいらしい。隣を見たら、ジャスミンも笑顔だった。森で意識不明になっていたのを助けてくれたんだし、俺を差別もしなかった。ハーフエルフは差別していたようだが。
俺は、このエルフ族の期待に応えるべきなんだろう。
「そろそろ夜も遅いし、腹も膨れた」
「では、歓迎の宴は、これで終了と言うことで」
「美味しかったよ。――あ、最後にひとつだけ。これだけ、言うのを忘れていた」




