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 修理して、また外に放りだすってのは、日本になかった考えだが、これは文化の違いだろう。それに、冷静に考えて、ナイトゴーレムは考えて動く戦車だ。回収して破棄ではコストがかかりすぎる。こちらの世界ではリサイクルが基本らしい。ゴミがでないんだから理想的な世のなかだ。


「じゃ、次の質問。俺がいない間。この村はどうなる? べつのナイトゴーレムが襲ってくる危険もあると思うんだけど」

「それは、当分の間、問題ないと思います」


 笑顔でこたえるマーガレットだった。何か策があるらしい。突っこんで訊こうかな、と思ったが、やめておいた。魔道的な専門説明がきたら俺には意味不明だし、何より、俺にはもっと確認したいことがある。

 俺はそれをすることにした。


「さらに質問。ここって、俺と、100年前のA以外にも、俺たちの世界の人間がきてるだろ? それも相当な数のはずだ」


 この質問で、マーガレットの表情が急に変わった。知られてはいけないものを知られた顔。――たとえるなら、そんな顔である。軽く右を見ると、ジャスミンも似たような表情をしていた。

 理由は不明だが、だから隠していたのか。


「なぜ、そう思ったのです?」


 マーガレットの声が、少しして聞こえた。えらく深刻そうだ。リラックスさせようと思い、俺は愛想笑いを浮かべながら説明することにした。


「最初、俺が目を覚ました直後から違和感はあったんだ。ジャスミンは言ってたぞ。100年前にAがきた。そのおかげで言葉がわかる。――100年前に、Aがきたってこと事態は事実だろう。ただ、それだけで、ここまで日本語が通じるのはおかしい。普通なら、教わったって廃れてしまうもんだ。もっと言うと、100年前の日本人は英語をしゃべらなかった。自分のことをAなんて言うはずがない。つまり、Aはアメリカ人か、イギリス人か、そうでなくても英語圏の人間だった。ということは、それ以外に、日本語を話す人間が、何人か、ここにきたことがある――違うか?」


 俺の確認に、マーガレットは無言だった。肯定の沈黙と判断し、話をつづけることにする。


「この推理が確信に変わったのは、あなたの名前だよ、マーガレット。あなたは100年前にAと会ったそうだな? ということは、Aに会う前から、マーガレットという名前をつけられていたことになる。マーガレットというのは、俺たちの世界の花の名前だ。ジャスミンやローズはともかく、Aに会う前からこの世界で生活していたエルフが、そんな名前をつけられるはずがない。それがつけられていた。つまり、Aがくる前にも、何人か、俺たちの世界の人間がここにきて、あなた方はその情報を知っていたことになる」

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