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俺の横でジャスミンが言ってきた。目をむけると、なんだか嬉しそうにしている。
「ほら、私も、久しぶりに都に行ってみたいし。フラグも立ったし、何か素敵なことでも起きそうな予感がするし」
「フラグってなんだ?」
「Bのことよ。異世界からきた、とっても強い、私たちの味方になってくれる人間。そういう人間が現れてくれることを、フラグが立つって言うんでしょう?」
また通なことを言ってくるなーこのエルフ娘。あきれたらいいんだか感心したらいいんだか。というか、俺のほうがフラグかよ。
「ジャスミン! B! ○○○○!」
これは、俺の左隣にいる子供エルフの声だった。ジャスミンが、ちょっと意外そうな顔をする。
「ローズ、あなたも行きたいの?」
「○○○○!」
「そう」
返事をして、ジャスミンが顔の角度を変えた。たぶん、子供エルフ――ローズってのが名前らしい――の、親がいるほうだったんだと思う。
「ローズはこう言ってますけど、いいですか?」
「ふむ」
案の定、ジャスミンの視線の先にいる、若い男のエルフが考えるような仕草をした。少しして顔をあげる。
「まあ、いいでしょう。不安がないわけでもありませんが、獣人類のBがいてくれれば、ローズに危険もありますまい」
「信頼してくれてありがとさん」
俺は笑顔でうなずいて見せた。――ということは、俺はジャスミンとローズというエルフをつれて、どことも知れぬ都まで旅にでるわけか。面倒くさいなーと思わないこともなかったが、どうせ、一度は死のうと思った身だ。最後に大冒険するくらい、神様も許してくれるだろう。俺が先にくたばったら、あとからきた親父とお袋に自慢話として聞かせてやればいい。
「話はわかった。それは承諾したとして、こちらから質問」
俺がマーガレットに言ったら、マーガレットが困ったように微笑んだ。
「こちらから質問も何も、さっきからBが質問をしつづけていますが?」
「あ、そうだったな。――じゃ、あらためて、追加の質問だ。都で、ナイトゴーレムが、この村を襲っているということを魔道士に言って、証拠も見せて。それでどうなる?」
「ナイトゴーレムを、一度に集めてもらって、内部のプログラムを変えてもらいます」
「あ、なるほど。不良品を回収するってのは、筋が通ってるな」




