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「そのために、ナイトゴーレムがつくられたのです。基本的な命令は、もちろんドラゴンを駆逐すること。そのために、ドラゴンの炎にも耐えられるよう、熱でも溶けない素材でつくられ、鋼鉄をも両断できる、強大な剣を与えられたのです。確か、1000体以上もつくられたとか」
「そりゃすごい」
俺は感心した。あんなのが1000体も襲いかかってくれば、さすがのドラゴンも太刀打ちできないだろう。
「さらに言うなら、ドラゴンも魔力の塊です。ナイトゴーレムから見れば、ドラゴンをたおした後、消費した魔力を補うことも可能になります」
「なるほど、それだけ聞くと、確かに理にはかなってるな」
大昔、原始人がマンモスを落とし穴に追いやって、殺してさばいて、みんなでわけ与えて食べるシーンが俺の頭をよぎった。あれと同じことをゴーレムにやらせているわけか。
「それにしても、ドラゴンって、ただの巨大な爬虫類じゃなくて、魔力の塊だったんだな」
「そうでなければ、あの巨大な身体を地上で維持することはできませんから」
なんとなく俺がつぶやいたら、あたりまえみたいな顔でマーガレットが補足説明をした。
「そもそも、あの巨体が、羽ばたいて空を飛ぶことなど、ありえません。あれは、魔導士の飛翔魔法と同じことを本能的にやっているのです。炎を吐くのは爆炎魔法。わたくしたちの目で魔力を測ると、ドラゴンは、まるで燃えさかる太陽のように見えます」
「へえ、そんなにすごいのか」
「はい。――ただの動物が炎を吐くことなど、あるはずがないと、冷静に考えれば、すぐにわかることだと思いますが?」
「あ、そうか。言われてみれば、その通りだな」
俺はレタスみたいな葉っぱを食べながら考えた。そういえば、生物学的に言うと、ウルトラ怪獣みたいな動物は生きていけない。あの体重を支える筋肉も骨格も存在しないと、どこかで聞いてはいたが。ドラゴンなんてものが本当にいるとしたら、魔力によるサポートは必要になってくるだろう。
「ところが、ときどき、故障でもするのか、わたくしたちの村に紛れ込んでくるのです。そのナイトゴーレムが」
「それで、私たちも魔力が強いから、ドラゴンの代わりに狙われて」
マーガレットとジャスミンが説明する。なるほどな。どんなマシンにも故障はある。宇宙人のUFОだってロズウェルに墜落したくらいだ。ドラゴン退治のロボットが道に迷っても仕方がない。
「で、そうなったら、わたくしたちは逃げるしかありません」
マーガレットが悲しげにつぶやいた。
「魔法で追っ払ったりできないのか?」




