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「は?」
「AI搭載、とかなんとか聞いていますが」
「へえ。それはまた優秀だな」
俺は感心した。こっちの世界の人間の技術開発も甘く見てはいかんらしい。感心する俺を見ながら、マーガレットがため息をつく。
「その、自立行動をとる、ということが問題なのです。普通のゴーレムなら、最初に与えられた魔力が尽きれば、そのまま動かなくなります。けれど、ナイトゴーレムはそうではありません。自分の内部の魔力が減少してくると、それを補おうとするのです」
「ふうん」
フライドポテトっぽい何かと一緒に並んでいた、魚フライみたいなのを食べながら、俺はうなずいた。つまり、充電が減ってきたら、自分の判断で充電するマシンってことか。東急ハンズで見たことがある。勝手に部屋を掃除して、勝手に充電する、あれと同じタイプだ。
と思っていたら、予想外の言葉が追加してきた。
「私たちの魔力を吸収するのよ」
隣に座っているジャスミンの声である。俺はぎょっとして横をむいた。そういうことか!
「それで昼間、あのナイトゴーレムは、あの小さな子供を」
「うん」
「おそらく」
俺の目を見つめながら悲しげにジャスミンが言い、視界の隅でマーガレットも寂しげに同意した。
「ただ、これは理解していただきたいのですが、ナイトゴーレムを開発した人間たちは、私たちを殺すことが目的だったわけではないそうです」
おのれ人間ども――と、一応は人間の分際で思いかけた俺の心でも読んだのか、マーガレットが話をつづけた。じゃ、どういうことなんだ。
「ドラゴン退治」
俺が疑問を口にするより早く、ジャスミンが短くつぶやいた。マーガレットもうなずく。――いるのか。やっぱり。考える俺にマーガレットが説明をはじめた。
「ドラゴンは、人間たちだけではなく、わたくしたちの生活までをも脅かします。わたくしたちも生きていかなければならない以上、ドラゴンは駆逐しなければなりません。もちろん、絶滅させてしまっては自然界のバランスが崩れますが」
さすがにそのへんはわかってるらしい。人類が――人類だけじゃない。エルフもだが、勝手に自然界のバランスを変えていいはずがないのだ。それで絶滅したり、そうでなくても、絶滅危惧種になった動物は、俺の世界には山ほどいる。黙って話を聞く俺の表情で納得したらしく、さらにマーガレットが話をつづけた。




