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 なんとなく言ったらジャスミンに突っこまれた。そうもそうである。生きるということは食うことで、食うということは罪深いことだ。そもそも、食わないで捨てるような真似もできない。――それで納得することにした。


「じゃ、いただきます。――はいいけど、まさか毒の入ってる肉だったりしないだろうな?」


 肉と一緒に並べられたナイフとフォークをとってから、ふと思って俺は訊いてみた。ジャスミンが不思議そうにする。


「どうしてそう思ったの?」

「だって、いままで、ドラゴンをさばいて料理したことなんて、過去に一回もないはずだ。そうじゃなくて、一回くらいはあったかもだけど、そんな記録なんて残ってないと思うし。これ、いきなり食って大丈夫なのか?」

「あの」


 不安に思う俺の前で、ウェイトレスが恐る恐る手をあげた。


「実は、オーナーが、その肉の一部を路上の野良犬に食べさせたんです。野良犬は喜んで食べてました。そのあと、しばらく見てましたが、調子を悪くすることはなかったそうです」

「あ、そうなのか。そりゃよかった。疑ってすまなかったな。じゃ、ちゃんと食べるから」


 安心して言い、俺はナイフとフォークでドラゴンのステーキにとりかかった。――食ってみてわかったが、硬いし、相当に臭みがある。マトン肉よりすごい。たぶん、ドラゴンってのはなんでもかんでも食う悪食だから、その肉にもいろいろ染みつくんだろう。煮込んで、煮汁を入れ替えて、香草で香りづけをすればうまいかもだが、あんまりステーキはいただけない。


「あのな、これ」

「気に入っていただけましたか?」


 横から声がかかった。見ると、髪は七三わけで、ダンディな口ひげを生やしたおっさんが笑顔でこっちを見ている。


「まずはドラゴンスレイヤー様に、退治した獲物の、最初の一口を食べていただきたく思いまして」


 たぶん、この男が、さっきウェイトレスが言っていたオーナーだろう。つか、それって要するに俺は毒見役じゃないか。


「あのな。これ、すごいぞ、悪い意味で。ひき肉にしてハンバーグにすれば行けるかもだけど」

「は?」


 オーナーが、少し期待外れな顔をした。


「あの、お口に合いませんでしたか?」

「ステーキなら、俺は牛かラム肉のほうがよかったな」

「申し訳ありませんでした!」


 青い顔でオーナーが頭を下げた。

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