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「もらうのって、騎士の位かな」
「その程度で済むはずないだろう。爵位に決まってる」
「言葉も通じない奴が爵位なんてもらえるわけないだろう。せいぜい金をもらって、はいさようならってところだな」
「俺は言葉わかるぞ」
仕方がないから言ったら、周囲がギョッという顔をした。
「なんだ? 昨日は何もしゃべらなかったのに」
「言葉が通じないふりをしていただけだったのか?」
「そうじゃない、これだ」
俺は自分の頭の輪っかを指さした。
「昨日、これを偉い人からプレゼントしてもらってな。それで通訳してもらってるんだ」
俺の説明に、隣にいたジャスミンが不思議そうな顔をして見あげてきた。
「B、そのこと、もうしゃべっちゃっていいの?」
「ドラゴン倒してじろじろ見られて、これ以上誤魔化すのは無理だ。いままで騙してた、なんて言ってくる奴も居そうだし」
言って俺は食堂のなかを見た。みんな静かになって俺を見ている。もう適当なことは言えないと判断したらしい。昨日までとは違って、何か言ったら俺には通じることがわかったらこうか。ま、仕方がない。
「飯にしよう。焼き魚とご飯を頼む。あと、味噌汁――はさすがにないか。何か、適当に野菜の入ったスープを」
「はい。ただいま!」
あわてたようにウェイトレスがうなずいて、厨まで小走りに駆けていった。テーブルにつき、食事を待つ。その間も周囲の視線がすごかった。というか、目の前に座っているジャスミンとローズも、なんだか不思議そうに俺を見ている。
「昨日も、この宿にいたのに。そんなに俺って珍しいか?」
「そりゃ、珍しいわよ。ドラゴンスレイヤーなんて、私もはじめて見たし」
あ、そうか。
「そういうのは、確かに珍しいかもな。ドラゴンもドラゴンスレイヤーも、俺もはじめて見たし」
「あの、あちらの客様からのサービスです」
「はん?」
顔をあげると、さっきとは違うウェイトレスがビンとコップを持っていた。その少し後ろにいた客が笑顔で手を振っている。
「ドラゴンスレイヤーに!」




