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「あばよ、名前も知らない古代からの独裁者様」


 俺が言うと同時に、はるか彼方で巨大なノヴァーランスをつくっていたメアリーが、それを投擲した。ドラゴンは巨大だから適当に投げてもどこかには当たるだろうが、それでも致命傷にはならない。確実に殺すには心臓を。ただ墜落させるだけなら翼を切り落とすかだ。ドラゴンは航空力学ではなく魔力で飛んでるそうだから後者は期待薄だが。

 そしてメアリーの投擲したノヴァーランスは、確実にドラゴンの胸の部分を貫いていた。


「ぐああああああ!!」


 ものすごい絶叫をあげ、ドラゴンが首を振りたくった。胸を貫かれたんだから心臓もつぶれているはず。それでもこの生命力か。そういえば、マムシというヘビは首を切り落とされても十分くらいビクビクと動くそうだが、それと同じってことだな。


「何故、貴様たちのような下等な人間に、この儂が!」

「喧嘩売ってきたからだろうが! こっちにも自衛権はある!!」


 首を振りたくるドラゴンのタテガミに捕まりながら俺は怒鳴りかえした。もっとも、いまのドラゴンに聞こえているはずもない。その翼の羽ばたきがやむ。さすがに空中で体勢を維持するのは不可能になったらしい。そのまま、ゆっくりとドラゴンの頭が下をむく。

 同時に、すごい勢いで地上が近づいてきた。じゃない! 俺が落下してるのだ!!


「わわわわ!」


 このまま頭から地上に激突したら俺はアウトである。下手したら元の世界に帰れるかもだけど、そんな可能性に期待している余裕もない。こうやって振りかえって見ると、よく自殺しようって気になってたな俺。頭の片隅で馬鹿なことを考えながら、俺はドラゴンのタテガミから首筋へ、そのまま背中へと這いつくばるように移動した。地上はどんどん近づいている。

 ドラゴンの背中まで移動したあたりで、地上が目の前まで迫ってきた。


「ナムサン!」


 俺はドラゴンの身体にしがみついた。同時に、すさまじい激突の衝撃が身体を震撼させる。何しろドラゴンの落下だ。ジャンボジェットが墜落したのと同じレベルの大事故が起こったと考えていい。ドラゴンの身体が若干のクッションにはなってくれたものの、それでも俺じゃなかったら死んでいただろう。


「痛つつつつ」

「「「「「「「「「「カカルゾ!!」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「オオー!!」」」」」」」」」」


 意識の飛びかけた俺の耳に、いままで聞いたことのない声が響く。頭を抑えながら顔をあげると、地上で待機していたナイトゴーレムたちが我先にとこっちへ駆けだしてきていた。あの巨大な剣を振りまわし、ドラゴンの身体をザクザクと切り刻みはじめていく。

 さっきの声は、ナイトゴーレムのものだったらしい。

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