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「いや、すごい魔力だな」
「ちゃんとした術式も知らないで、これほどの変貌を遂げるとは」
「これは、人間のなかでも、かなりの逸材だろう」
よくわからないことを言ってくる。どういうことだ?
「あの、いろいろと質問があるんだけど」
「○○○○!」
俺の言葉なんて気にしたふうもない声がした。目をむけると、さっき、三メートルに襲われかけた子供エルフが上から俺を見下ろしている。――父親らしいエルフに肩車されて、遠くから俺に声をかけてきたのだ。この子供エルフまで笑顔である。
「質問って、何?」
俺のそばでジャスミンが訊いてきた。えーと、何から訊いたらいいもんだか。
「そうだな。あの三メートルくらいあるロボットはなんなのか? どうしてみんな、俺を怖がらないのか? さっき、誰かが、すごい魔力とか言っていた。俺は魔法なんか使えない。どういうことなんだ?」
仕方がないから、不思議に思うことを全部口にだして言ったら、ジャスミンが困ったような顔をした。
「そんな、一度にいろいろ質問されても」
「わたくしが答えましょう」
ジャスミンとよく似た、しかし、かなり落ち着いた感じの声が響いた。声のしたほうに目をむけると、そこにいたエルフたちが、ざざっと左右にわかれる。あ、これは、相当に偉い立場のエルフがきたらしい。
「よくいらっしゃいました。歓迎しますよ、B」
俺にむかって声をかけたのは、外見的にはジャスミンより少し年上の、よく似た感じの女性エルフだった。ジャスミンが天使なら、こっちは女神だな。
「わたくしは、マーガレットと言います」
「私のママよ」
俺の横でジャスミンが説明した。なるほど、似てるはずだ。年齢は――100年前にきたAと話をしたらしいから、かなり年上のはずである。まあ、相手は女性だし、エルフに年を聞くのも意味がない話だろう。
「はじめまして。俺はBだ」
「今夜は歓迎の宴ですね」
もう完全に人間の姿に戻った俺を見つめ、マーガレットが嬉しそうに微笑んだ。
その日の夜。
「それでは、あらためて質問に答えましょう」




