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これが魔力か。そういえば、まるで太陽を直視しているようだとマーガレットが言ってたっけ。いまならよくわかる。
「下等な人間どもに、本来の支配者の力のほどを見せつけてくれるわ――」
ドラゴンの声は怨嗟のようだった。これは話しても通じないタイプだな。ナイトゴーレムに自分の行動を監視されて、縄張りを侵されて、相当頭にきているらしい。こりゃ、腹をくくってやるしかないわけか。
でもどうやって? ぶっちゃけ、あれは化物だぞ。
「行くぞ!」
メアリーが叫ぶと同時に、ドラゴンの周囲を飛んでいた、ほかのワイバーンたちから光が飛びだした。輝いたのではなく、光線がでたのである。それも、ワイバーンからほかのワイバーンへ。おそらく、ワイバーンに乗っているダークエルフや、ミーリア、レイリアが、何かしらの魔法を使ったのだろう。光で描かれた正三角形がふたつ、ドラゴンを囲むようにつくられていく。
「――六芒星か――」
俺は感心した。魔法陣やらなんやら、どこかで見たことがあるが、あれである。メアリーの部下たち4人のダークエルフと、ミーリア、レイリアのふたり、合計6人がドラゴンの周囲を飛びながら六芒星を完成させていった。
おそらく、それでドラゴンの動きを封じたのだろう。
「ドラゴンは、確かの巨大な魔力の塊だが、それを本能的に使っているだけだからな。我々のような技がない」
ひとり、六芒星をつくるチームには加わらず、ドラゴンの上空を飛びつづけるメアリーがつぶやいた。
「それに、チームプレイという概念もな。個々では我々がドラゴンにかなうはずもないが、訓練し、ひとつの部隊として行動すれば、あるいは我々にも勝機がある」
メアリーが右手を手綱から離し、上空へむけた。見る見るうちに、その手に青い光が宿っていく。光の剣だ。いや、光の槍と言った方が正確だっただろうか。メアリーがそれをかまえ、ドラゴンを見下ろす。
「あとは、必殺の急所を狙う。ドラゴンも生物である以上、心臓を貫かれれば息絶えるはずだ」
言っている間にも、メアリーの手に宿る光の槍はどんどん巨大化していった。それと同時にメアリーの身体が震えだす。どうも、限界を超えて自分の魔力を引きだし、最大級の攻撃を喰らわせようとしているらしい。それほどの相手ということなんだろう。
「覚悟!!」
メアリーが叫ぶと同時に光の槍をドラゴンへめがけて投げつけた。――同時に、ドラゴンが口を開いた。いままで口を動かさずにしゃべっていたのに、だ。




