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「いいか! 上下左右に移動しながら、標的へ近づくぞ。奴の息吹には絶対に触れるな!!」

「「「「わかりました!!」」」」


 あの火の柱はドラゴンのぶちまけた炎だったらしい。あぶないな。さっき見たときはかなりの近距離だったぞ。聞いた話では鉄をも溶かすということだったが。


「行くぞ!!」


 メアリーの言葉に合わせ、ほかのダークエルフたちの乗ったワイバーンも、ドラゴン――とメアリーが言っていた、黒い点にむかって手綱を振るう。ミーリアとレイリアもだ。とりあえず後方に目をむけたが、あとを追ってくるワイバーンは存在しない。この町のワイバーンはこの七体だけか。

 まあ、一対七だったら、行けるかな、と俺は考えていた。


「――おいちょっと待てよ。嘘だろ」


 その考えが甘かったと気づいたのは5分もしてからだった。ときどき飛んでくる炎を避けながら、俺たちは黒い点へむかって飛びつづけたのだが、当然ながら、近づくにつれて、目的の黒い点はどんどん巨大化してくる。最初は黒い点だったのが、野球のボールくらいになり、バスケットボールくらいになる。このへんで具体的な形も判明してきた。さらには車ほどのサイズになり、ダンプほどになり、もっと大きくなり――


「あんなのとやりあうのか? 大人と子供の喧嘩じゃないか」


 俺は茫然とつぶやいた。なんだあのサイズ。リアルでゴジラ見たらこんな気分なんだろう。ジャンボジェットよりでかいんだぞ。あんなもんがなんで空飛んでるんだ。


「だから言っただろう! ワイバーンがネコならドラゴンはトラだ!!」

「確かに言ってたけど! だったらなんで逃げないで戦おうとするんだ!?」

「一族の誇りだ! 私が逃げたら一族の名に傷がつく!!」


 ものすごく格好いいことを言いながら、メアリーが手綱をひいた。急上昇するワイバーンのすぐ下を炎の柱が駆けていく。


「女なのに偉いな!!」

「男女差別かそれは!? あとで問題にするからそのつもりでいろ!!」

「俺はほめたんだ! もし問題にするんだったら俺だってしゃべることしゃべるからそのつもりでいろ!!」


 怒鳴り返したら、メアリーがむっとした顔で俺のほうを見た。


「――まあ、仕方ないか。いまはそれよりも目の前の問題だしな」

「そうそう、あとのことは、生きて帰ってこれてからだ」

「不吉なことを言うな!」

「現実は不吉飛び越えて大ピンチだぞ」


 俺はメアリーの肩越しに下を見下ろした。

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