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なんだかよくわからんが、そういうものらしい。
「それで無理矢理にでも地上に落とし、そこでナイトゴーレムたちをけしかけて命を奪う」
「なるほどな」
さすがにナイトゴーレムたちは飛べないらしい。メアリーの肩をつかみ、バランスを崩さないようにしながら下を見ると、町の住民たちがあたふたと家のなかへ入って行った。俺たちが地下にいる間に緊急警報でも流れたみたいだな。代わりにナイトゴーレムがぞろぞろと姿を現しはじめる。地下倉庫に保管されていた奴をアーバイルが起動させたらしい。
それが一気に駆けだし、城下町の門から外へ雪崩でていた。
「で、肝心のドラゴンはどこにいる?」
「どこに目をつけているんだ! 前を見ろ!!」
メアリーに訊いたら切れたみたいに怒鳴られた。言われて正面にむかって目を凝らすと、入道雲のなかに黒い点が見える。
「なんだ、小さいな」
「馬鹿か貴様!? この距離であれが見えるということは、とんでもなく大きいんだぞ!!」
メアリーの切羽詰まった声が説明してきた。切れてるんじゃなくて悲鳴だったらしい。俺たちが相手をするドラゴンと言うのは、よほどのモンスターだということか。
「古文書を読んだことはあったが、まさか本当だったとはな。もっとまじめに目を通しておくべきだった!!」
ワイバーンをあやつる手綱を操作しながら、メアリーが後悔したみたいに叫んだ。しゃべってないと緊張で気が休まらないのだろう。
「古文書って、何が書いてあったんだ!?」
俺も怒鳴るみたいに質問した。ワイバーンの飛行速度が上昇して、周囲がビュウビュウうるさいから怒鳴らないと相手に聞こえない。
「ワイバーンを猫に例えるなら、ドラゴンは虎だそうだ!」
「――何い!?」
猛スピードで飛ぶワイバーンの上で俺は絶叫した。
「じゃ、勝てるわけないだろうが!!」
「だから、数にものを言わせてなんとかするしかないんだ! 戦っても殺される、無抵抗でも殺される。だったらやることは決まっている。私たちは騎士だぞ!!」
「俺は一般人だ! 騎士の勘定には入らないはずだぞ!」
「だったら降りるか!? いやなら、この場で飛び降りてもらってもかまわないんだぞ!!」
言われて俺は、あらためて下を見た。目測だが、いま、大体地上300メートルである。TVでスカイダイビングの映像を見たことがるが、あんな感じだった。そういえば、俺は飛び降り自殺をしようとして、こっちへきたんだったな。




