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 この言葉はジャスミンだった。


「Bは、そりゃ、ナイトゴーレムを倒したけど、あくまでも普通の人なのよ。騎士みたいに町の人を守るためにドラゴンと戦う必要はないはずだわ」

「獣人類が普通の人だと言う気か?」


 メアリーの質問にジャスミンが沈黙した。


「いまは戦力が欲しいんだ。ほら、B、早く乗れ」

「お、おう。わかった」


 状況に飲まれて俺もうなずいてしまった。あとで考えたら、俺は逃げだしてもよかったわけだが。騎士なわけでもなんでもないし。このときは考えつかなかったので、とりあえず、おっかなびっくりワイバーンに近づく。


「おまえが怯えると、ワイバーンも怯えるぞ。平気な顔をしておけ」

「そ、そうか」


 言われて、とにかく平静を装いながら俺はワイバーンにまたがった。それでもおっかないからメアリーに後ろから抱きつく。

 びくん、とメアリーが反応した。


「あのな。あんまり抱きつくな」


 俺のほうはむかず、小さい声で言ってきた。


「あ、すまん」


 おっかないからしがみついただけなんだが。やはりメアリーも女性ということらしい。仕方がないから、少し離れて、肩に手をかける。


「では、行くぞ!」


 俺ではなく、ほかのダークエルフたちに言い、メアリーがワイバーンの手綱を握った。


「はあ!」


 メアリーが気合いを入れて手綱を振るうと同時にワイバーンがばっさばっさと翼を羽ばたかせはじめた。こんなんで本当に浮くのかな、と思っていた俺の横で、ほかのワイバーンが地面から離れだす。全身を赤い光が覆っていた。なんだかわからないが、明らかに普通じゃない。――少しして、俺も思いだした。


「そうか。航空力学の理屈じゃなくて、魔力で飛んでるんだったよな」


 俺がつぶやくと同時に、俺たちの乗っていたワイバーンも浮上しはじめた。


「このワイバーンでドラゴンとやりあうわけか?」

「やりあう、と言うよりかく乱だな」


 俺のほうをむかずにメアリーが説明した。


「ドラゴンも飛ぶそうだからな。空を飛ぶもの同士で、まずは空を覇するものがどちらかなのかを決めなければならん」

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