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「行くぞ」


 ここで怖気づくような格好悪い真似はしたくない。無理に虚勢を張り、必要以上に背筋をただし、本当は漏らしそうなくらい怖いのを平然な顔で誤魔化して言った俺はエレベーターから外にでた。


「うわ!!」


 外の景色を見て、俺は腰を抜かしかけた。俺の前には、ばっさばっさと羽ばたく、巨大な翼竜と言ったらいいのか、なんかそんな奴が5頭も6頭もいたのである。こいつらか!


「あわてるな! そいつらはドラゴンじゃない!!」


 大急ぎで獣化を意識しかけた俺の背後からメアリーの声が飛んだ。横目で確認すると、メアリーを先頭にして、ダークエルフたちはみんな冷静な顔をしていた。


「そうか、Bは知らないんだったな。こいつらはワイバーンだ。いざというとき、私たちが乗る。空飛ぶ馬だと思ってくれたらいい」

「――ああ、そうか。こいつらは味方なのか。あービックリした」


 メアリーの説明に俺はうなずき、あらためてワイバーンたちを見た。最初は驚いていて気づかなかったが、なるほど、馬の背中に乗せる鞍みたいなのをつけている。首に手綱がかけられ、頭にはヘルメットみたいなのをかぶっていた。

 確かに、古代の戦場でグラディエーターが乗る馬の翼竜版である。


「メアリー様、こちらにおいでと聞きましたので、ワイバーンの用意をしておきました!」


 農夫みたいな格好をした青年がワイバーンの間からでてきて、気をつけの状態でメアリーに報告した。この人がワイバーンを飼育している係員ということなんだろう。


「ありがとうな。ミーリアたちは?」

「もうでております」

「そうか。じゃ、行くぞ!」

「「「「は!!」」」」


 メアリーの言葉に、ほかのダークエルフたちが敬礼でこたえ、次々とワイバーンに乗りだした。やはり騎士である。いざというときはきちんとしたもんだな。まあ、ドラゴンが街にきたのはナイトゴーレムが都へ帰りだしたからで、その原因はナイトゴーレムの暴走で、暴走させたのがメアリーたちなんだから、きびきびと働いて当然ではあったんだが。


「B、私の後ろに乗れ」


 考えながら見ていたら、メアリーが俺のほうをむいて言ってきた。


「は? 俺も乗るのか?」

「貴様はナイトゴーレムを倒したそうだな。だったら、ドラゴンとも互角に戦えるだろう。一緒にこい」

「ちょ、ちょっと待ってよ」

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