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いくらなんでも、これでさすがに動かなくなるだろう。人間の通り魔がナイフを使うのは、それで自分が刺されたら死ぬから相手にも使うのだ。三メートルのロボットをたおすには、三メートルの持っている武器を使うのが一番有効な手だったのである。
「それはいいとして、だ」
きて早々に、やっちまったかな。俺は三メートルの剣から手を離した。恐る恐る背後に目をやる。金髪で白い肌の、綺麗な顔立ちの村人――じゃなくて、村エルフがぞろぞろと集まってきていた。皆、呆然と俺を見つめている。獣化から、徐々に人間の姿に戻っていく俺が珍しいらしい。
そして、恐ろしいのだ。
「驚かせて悪かったな。この三メートルのロボットがなんだかわからないけど、すぐでて行くから――」
「B!」
言いかけた俺のセリフが遮られた。声のした方向をむくと、一番はじめに見た、あの天使みたいな顔立ちのエルフが目を見開いて駆け寄ってくる。確か、名前はジャスミンだったか。
「○○○○――あなた、獣化症だったの!? Aと同じで!?」
よほど興奮していたのか、本来の自分たちの言葉でしゃべりかけ、途中から日本語になった。仕方がないからうなずく。
「まあ、見ての通りだ」
「素敵!」
ジャスミンが嬉しそうに言い、俺の腕をペタペタ触ってくる。獣化症の身体が珍しいらしい。――これは予想外の反応だった。俺は獣人類だぞ。それが素敵だ? 訳がわからずに周囲を見たら、ほかのエルフの皆様も、珍しそうな顔をしながら、それでも近づいてきた。
皆、笑顔だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
半分ビビりながら俺は後ずさった。正体を知られて歓迎されたのは生まれてはじめてである。どうしたらいいのかわからない。
「あの、質問するから答えてくれ。あのな? 俺のこと怖くないのか?」
「え?」
笑顔で俺を見ていたジャスミンが、少し不思議そうにした。
「あなた、私に暴力を振るうの?」
とんでもない質問で返してくる。俺はあきれた。
「振るうわけないだろう」
「じゃ、怖くないわ」
返事をするジャスミンの背後から、ほかのエルフたちも近づいてくる。




