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「いままで、そういうことはなかったみたいだったからな。急にドラゴンがきたっていうのは、事件として考えておかしい。どこかに不都合がある」

「それは――」


 アーバイルが言いかけ、どういうわけだか、口を閉じた。

 なんだか悔しそうだった。不思議に思って見ていると、アーバイルが俺にらみつけるように顔をあげてくる。


「言いたくないが説明しよう。たぶん、ドラゴンは、私のナイトゴーレムにだした招集命令に反応したんだ」


 よくわからないことを言いだした。


「どういうことだそれは?」

「だから言葉通りの意味だ。私は、この工場から、各地に配置されているナイトゴーレムたちに召集の命令をかけた。もちろん、一度にすべてではなく、順番を考えて、各地の警戒が薄れることのないように考えていたつもりだった」


 確かにそういうことを言っていた。思い返す俺の視界の隅で、メアリーがアーバイルのそばまで近づいてくる。


「それが、そうではなかった、ということか?」


 冷淡に口をはさんできたのはメアリーだった。アーバイルがうなずく。


「おそらく、ドラゴンも、この日を待っていたのだろう。部分的とはいえ、ナイトゴーレムたちが背をむけて都へ帰りだした。これはチャンスだ。うまく魔力を隠蔽して近づけば、いままで接触することのできなかった都に炎の息吹を吹きかけてやることも不可能ではない。――そう考えた連中もいていいだろう」

「なるほどな」


 長いこと喧嘩を売ることもできなかったから、その憂さ晴らしをしてやろうということか。ドラゴンたちが喧嘩を売れないのは、過去に無茶苦茶やったから、それを防止するナイトゴーレムたちが派遣されたからなんだが、この理屈は通用しないだろう。たとえばの話だが、熊は、一度奪いとった食料は自分のもので、奪い返されたら盗まれたと判断する。――TV番組で見たことがある話だが、おそらくドラゴンも同じ思考回路のはずだ。


「つまり、話の通じない、無茶苦茶面倒臭い奴を相手に喧嘩をしはじめたってことか。こりゃ大変だ」


 しかも、そのドラゴンの姿を見て、生きて帰ってきたのがひとりもいないみたいなんだから余計にたちが悪い。


「「「「「「「「「「ドラゴンを見るときは死ぬときだ!!」」」」」」」」」」


 さっきの言葉が、なんだか余計に思いだしてくる。俺ってやっぱり死ぬべきだったのかな、と思いはじめたあたりでエレベーターが地上に到達した。

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