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「「「「「「「「「「ドラゴンを見るときは死ぬときだ!!」」」」」」」」」」
「あ、そうか。ごめん、そりゃそうだ」
切れられて、反射的に謝ってしまった。というか、冷静に考えたら当然の話である。それほどの恐ろしい存在だからナイトゴーレムも開発されたんだし。――いや待てよ。誰もドラゴンのことを知らないんだから、ひょっとしたら恐ろしいと言われているのは偏見で、実はいい奴なのかも、と、ちらっと思いかけ、俺は頭のなかで否定した。見た奴は死んでるんだからそんなわけはない。
「とにかく、アーバイルのところへ戻ろう。ドラゴンがでてきたのは間違いないんだから、あとはナイトゴーレムの出番ってことになる。その責任者はアーバイルなんだ。あとはどうすればいいのか、アーバイルに任せればいい」
とりあえず俺はメアリーたちダークエルフとドワーフたちを交互に見ながら提案した。ありがたいことに両方ともうなずく。
で、あらためて、お互いがにらみあった。
「こんな肉団子どもと一緒に行動するのは不愉快だが、緊急事態だし、仕方がない」
「何を言っているんだ寄生虫どもが!」
「ああ!? おまえたちこそ、アーバイルのような人間の下で働いている底辺階層ではないか!」
「我らは誇りあるドワーフだ! 精密機械の製造こそが使命! だから喜んで仕事をしているのだ! 何を勘違いしている!?」
「いい加減にしろ! 悪口を言うなら母国語で、相手にわからないようにやれ!!」
さすがにあきれて俺も恫喝した。これが非常事態じゃなかったら、俺も対岸の火事気分で、のんびり見ていたかもしれなかったが、いまはそれどころじゃない。不満そうな顔でメアリーたちダークエルフとドワーフたちが俺のほうをむく。
「「だってこいつらが」」
「グルルルルル」
面倒なので歯を剥きながら俺はうなった。軽く変貌したかもしれない。人を越えた俺の鬼気にダークエルフたちが押し黙った。ドワーフたちも、ギョッという顔をする。
「――なんだいまの?」
ドワーフのひとりが茫然とつぶやいた。
「この黄色いの、ただの人間じゃ」
「そんなことはどうでもいい! なんだったら後で説明する!」
生きていられたらな。余計な言葉は喉の奥で飲みこみ、俺はメアリーのほうをむいた。
「メアリー! 頼むから先頭に立って、アーバイルのところまで案内してくれ。俺ははじめてきたから道を覚えてないんだ。ひとりでは元に戻れない」
「わ、わかった」




