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「女は私たちだけだ。男は、何人かいる」
「なるほど。つまり、もしナイトゴーレムのプログラムを違法に書き換えてる連中がほかにもいるとしたら、そいつらか」
「男連中は町の外で、ずっと危険な仕事についているはずだから、そんなことやってる暇はないと思うが」
「ふむ」
俺は考えた。つまり、ナイトゴーレムのプログラムを書き換えた奴は、ここにいる5人だけという判断でOKか。
「あのな」
俺はメアリーのほうをむいた。
「二度とナイトゴーレムのプログラムをいじらないって約束できるか?」
俺の質問に、メアリーがうなずいた。
「あのことを、誰にも言わないとBが約束するなら、私たちも約束しよう」
「かまわないぞ。約束する」
「では、私たちもだ」
「じゃ、これで話は終了だな」
俺は下をむきながらため息をついた。同時にメアリーもため息をつく。妙に思って顔をあげると、メアリーも顔をあげていた。
「何を疲れたような顔をしている?」
「ほっとしたんだよ。人の見てないところで口封じに殺されるのかと思ってたからな」
「だから話し合おうと最初に言っただろうが」
「そりゃ、言ってたけど、とてもそうは思えなかったんだよ」
「私たちはこれでも騎士だ。罪のない者にむける剣は持っていない」
「じゃ、なんでジャスミン――あの白いエルフのことだけど、彼女たちに危害を加えようとしたんだ?」
「むこうが喧嘩を売ってきたからだ。それに、殺す気はなかった。この国から追いだそうと思っていただけだと言ったはずだが?」
「あ、そうだったな」
俺は頭をかいた。喧嘩を売ってきたっていうのは勝手な思い込みだと思うが、仲直りさせるのは無理だと思ったほうがいいらしい。まあ、人間関係――じゃなくてエルフ関係も、一度こじれたら修復は至難の技ってことか。
「ま、いいか。じゃ、俺たちはジャスミンと森に帰るから。メアリーたちがジャスミンのことを気に入らないのはわかったけど、だったら口を利かなければいいだけだから、あんまりちょっかいはかけないでやってくれ」




