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俺の発言と同時にメアリーたちがおとなしくなった。――いま気づいた。この表情は怯えである。メアリーたちの不自然なつくり笑いは怒りを押し殺していたのではない。恐怖を押し殺していたのである。
「やっぱり、私たちを抱くつもりなのか?」
メアリーが怯えた顔で訊いてきた。なんか、俺が一言命令したら、この場で裸になりそうな感じである。
「そんなわけないだろう」
俺の返事に、メアリーが柳眉をひそめた。
「私たちに、女としての魅力を感じないのか?」
「十分魅力的だと思うぞ」
「では貴様ホモか?」
「俺の話を聞け!」
どうもおかしな方向にばっかり話が行く。いったん話を中断させ、俺はメアリーと、ほかのダークエルフたちの顔を見まわした。ダークエルフたちも緊張した面持ちになる。
「正直に言うけど、昨日、メアリーたちが言ってた会話は全部理解できた。あのときは黙ってたけど、俺も驚いたぞ。あんなことやってたのか」
「白い連中は目障りだったからな」
「だからってやっていいことと悪いことがあるだろうに」
俺はあきれた。
「白いエルフは殺してもいいと思ってたのか?」
「殺すようにはプログラムしなかった」
「は?」
「あのナイトゴーレムは、白い連中の魔力を吸収するだけだ。それでも、何度も被害に遭っていれば、そのうちこの国をでていくだろうと思っていたからな」
「なるほど」
つまり、女のよくやる、ネチネチとした嫌がらせだったってことか。
「それで、ああいうことを、ほかにもやっている連中っているのか?」
メアリーがほかのダークエルフたちを目を合わせた。
「たぶん私たちだけだと思う」
「そうか」
これは本当のことを言ってるな、と俺は思った。私たちだけだ、と断言したなら、なんの根拠があるんだと疑うところだが、私たちだけだと思う、と言う以上は、ほかのメンバーが何をしているのか知らないということである。
「それから、ここには、ほかにもダークエルフの騎士はいるのか?」




