父カシラの遠い記憶
《いいか零。かつて人間は、全ての生物から讃えられ、何不自由無い生活を確証されていたんだ。神の姿に似たその立ち姿は、生物にとって崇高なものだったのさ。しかし、神はある欠点を忘れられた。それは外敵の存在だ。外敵がいないために人間は狂気に変わったのさ。そうして、人間が生物を捕食するようになった。それから人間は地上の世界に引きずり落とされるようになった。天の世界より神々が、空の世界より生物たちが、人間を敵と見なすようになったんだ》
それ以来人間は生物と神との争いを繰り広げるようになり、やがて羽根のはえた生物たちは地上に降ろされてしまったのだ。神々の手によって。
人間は人間同士で殺し合い、生物を家畜として育て喰らい、神でさえも人間は自分等よりも下に位置づけたのだ。この地上の世界は最早、人間の世界へと成り下がってしまった。これが真理だと、人間は断言してしまったのだ。
幼い頃の零には父カシラの言葉は分からなかった。
が、それでも内容はうっすらとだが覚えている。
それが何を意味するかまでは、分からなかったのだが。
*
ダークによってあけられた腹の風穴を見て、そこに元あった腹の感触がない事を再確認した。零はこの暗闇の中で、自分しか見えていないと思われる暗闇の中で、他に3人の者を見つけた。
「剣……お前も捕まったんだな……」
無意識に流れ落ちる涙に視界を濁らせながら、弟を見ていた。
零は非力な己を呪った。無慈悲な神を呪った。
(くそぉ……)
奥歯をギュッと噛み締めて、零はどこかも分からぬ地面に拳を叩きつけた。
また意識が遠退いていき、零は目を閉じた。
*
「継承者は2人。鬼が1人。そして、太陽剣の持ち主が1人。確保しましたマーラ様」
「あぁ。あとはカーラの奴を待つだけだな……」
古びた廃屋の囲炉裏の側で、黒の長髪の男と、髪の青い小柄な少年が喋っていた。
少年の方が、長髪の男を見ると「カーラが来るまでの間、少し寝る」というと、そのまま横になり眠りについた。
彼の側に落ちてあったのは、紅い色をした【短剣】であった。
マーラが眠ったのを見届けて、長髪の男はスッと立ち上がり部屋を出た。
一応補足しときますが、神話というのは何百年何千年という月日を通して伝えられてきたものです。
そしてそのほとんどが口承です。つまり、どこかで間違って伝えられていたとしてもなんら不思議ではありません。
これから先の話でどこか矛盾が出てきたらそれはきっと間違って伝えられたのを話しているのでしょう。
神話として形に残っているのはあくまで、紙が出来てそれに字を書くようになってからです。それまでに既に何千年と伝えられてきたんでしょう。どれだけ記憶力の良い人でも伝えられてきたこと一言一句全て紙に綴るのはおそらく不可能です。
と、いうわけでカシラが読んできた神話というのは何千年も前から口承で伝わってきたのを書籍化したものですので、カシラ自身が直接聞いた話はかなり少なく信憑性がありません。
これから出てくるキャラの話を聞いて、この世界の創成神話を想像してみてください!
と、長々書きましたがサラッと読み流してくれて構いません笑
良ければ感想一言でもくれると有り難いです。
宜しくお願いします。