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Zero  作者: 山名シン
第4章
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想い

想像(イメージ)により、創造(クリエイト)される魔剣紅は、何も自分の目の前にだけ出現できる訳ではない。


アイスマウンテンで戦ったアイスアウィス戦でみせた、第一段階の応用技。

目の前ではなく、想像するだけで手の届かない次のフロアへ行く階段の目の前に紅を出現させた事がある。


このように、いつどこでどんな時でも魔剣紅は創造出来るのだ。


《覚えておいた方がええ。これは便利だからな》

祖父ゲリラに教わった魔剣紅の使用法。

この最後の戦いでそれが一番の鍵となる。


「龍が消えたと思いきや、たかが人間が立ち塞がるとは……」

マハーカーラは金棍棒(トリシューラ)とチャクラムを構え、同時に放つ!

チャクラムの回りには、雷と風の渦が巻いている。

このチャクラムに触れればたちまち体が切り裂かれ肉片が円を描いて、回りに浮かぶだろう。

が、今の零にはその恐怖はない。

大正義神(アストライア)雅王長(ライアン)を取り込み、継承者となった今、たとえ体が半分に裂かれても再生する驚異的な肉体を得たからだ。

神々しく輝く零とマハーカーラの神器がぶつかる!


チャクラムを左手で弾き、神速で殴る!

だが、それは慧神眼(ホルス)を開眼したマハーカーラには効かない、そしてその威力は零自身に跳ね返るのだった!

声なき声をあげてうめく零だが、臆することはない。

一撃一撃を確実に放っていく。

マハーカーラが三叉槍を振るい、魔剣紅の嵐が飛び交った!

紅い雨が真横に直線で突き進む。

チャクラムがかまいたちを起こしながら迫る。

零の拳が白黒の炎を纏い、打つと、業火の炎が魔剣紅の嵐を焼き消していく。

「うぉぉぉ!!!」

しかし、零の脇腹に突然に風穴をあけた!

「迫撃の棍…」

貫いた最強の矛は、神の力を持った零にも再生は許さない。

腹から血が滴り落ちていく。

再生は出来ないが、それでも零は突っ込んでいく!


もはや理屈ではない。

零の本能が、マハーカーラを倒せと言っているのだ!!!

超獣猪を仕止めたら時も、龍牙家と戦った時も、零は本能の赴くままに、突っ込んでいっていた。


今度もそうだ。

零は敵わない敵であっても、体が勝手に動く熱い男だった!

ドアをノックする仕草で、零の腹をさらに重力の塊が襲う!

魔剣紅の嵐が!チャクラムのかまいたちが!金棍棒(トリシューラ)の迫撃の棍が!

迫り来る神器の驚異に、零は血へどを吐きながら、傷付き身体中から血が吹き出ながら、突っ込む!

突っ込む!突っ込む!突っ込む!突っ込む!突っ込む!


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


慧神眼(ホルス)を開眼したマハーカーラは、未来の予想と過去の結果を同時に見極め零が次に何をしてくるのかを確実に、予知していたのだが、[何も考えず]ただ、ただ、突っ込むだけの零に恐怖を覚えていた。


マーラとカーラは1000年生きたとはいえ、まだ10歳の時で[意識]が止まっている。

10歳のマーラとカーラには、零の行動は理解出来ないし、理解出来ない事は怒りと同時に恐怖を覚えるものだ。


段々マハーカーラの動きが「鈍く」なっていく…。


何をやっても効いていないような錯覚を覚える。

いや、確実に効いている。

マハーカーラの放つ技の全て零には一撃必殺の如く効いているはずだ。

「何故だ!何故だ!何故なんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

大黒神マハーカーラの精神が崩壊した!


神とは言い換えれば、子供と同じなのだ。

自分の力が強いが故に、何もかもが思うままにいく。

だが、それが思うようにいかなかった時、怒りを覚え興奮し、我を忘れ何かに当たり散らす、「子供」と同じなのだ。


マーラが龍神と戦った時もそうだ。

理解出来ない、自分の思い通りにいかない時に、何が何だか分からずに当たり散らしただけだった。

これは双子であるカーラも同じ事。

どれ程粋がっていても、所詮子供の浅知恵。


マハーカーラの肩を掴んだ零はその腹目掛け、渾身の一撃をお見舞いする!

だが、それはマハーカーラには当たらずに衝撃だけが零自身に返ってくる。

肩を掴んでいるので、マハーカーラと一緒に吹き飛んでいく。

「やめろ!やめろ!やめろ!やめろぉぉぉ!」

「いいじゃねぇか!『お前ら』には一切攻撃が当たらねぇんだからよぉ!!!」


殴る。跳ね返る。殴る。跳ね返る。殴る。跳ね返る。殴る。跳ね返る………………………。


一体何発そうして殴った事だろうか?

そしてどれ程吹っ飛んできたのだろうか?


地面のすぐ側までそうやって上空から吹き飛んでいった時、零は最後の一撃を入れると同時に、掴んでいた肩を離した。

最後の一撃を入れた瞬間、零はまた上空に吹き飛び、マハーカーラは地面に叩き付けられた!


そして、零の最後の創造(クリエイト)を発動した。


何千何万本分の紅かは知らぬ、地面に刃を向けていた巨大な一本の魔剣紅に、マハーカーラは背中から突っ込んでいった。


魔剣紅と同じ、紅い血しぶきが飛び散り、マハーカーラの腹には、巨大な風穴が見えた。


「良かったじゃないか……お前らの大切な物で、逝けるんだから……」

大地に足をつけた零は、突如輝きを失い、膝をついた。

そしてその輝きは、龍神たちの神々と、雅王の戦士ライアンとに、別れた。


マハーカーラとの戦いの最中、零は彼らの【想い】を聴いていた。


【母と父が愛したこの(ゲーラ)を守るんだ!】

それが彼らの正義だった。

それが彼らの全てだった。

それが彼らの人生だった。


(実はマハーカーラが途中に動きが鈍くなったのは、マーラに取り付いていた右側上半身の、メドゥーサの蛇の毒が回り始めた事に起因するのだが、今はまだそれには触れないでおこう)


こうして、零達とカーラ・マーラ達の戦いは幕を閉じたのだった。

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