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Zero  作者: 山名シン
第4章
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静かな舞い

龍神は自然の神達に号令をかけていた。

神にしか聞こえない超音波のような声で、集合するように言った。

『今すぐ集まれ。大黒神を叩く、早く集まれ』

ライアンとの戦いを途中で切り上げ復活した大黒神マハーカーラを見ていた。


「上等だ……あっちが大黒神なら俺たちはルドラ神、暴風雨神になるぜ!」

既に神共闘(アンゲルス)に入っていた雷鬼とワストの中に、シーラが混ざり、「雷、風、水を操る神へと神化した」

だが、唐突に彼らは力が使えなくなり、三人は顔を見合わせたまま立ちふさがった。

「おい!どうなってる!何故使えない!」

「俺に聞くな!それより上を見ろよ。龍だ!」

水、風、雷の形を模した龍の姿がそこにあった。

その龍は宙を舞い、どこかへ消えていった。

「あの、僕たちはこれからどうすれば?」

「さぁな。力が使えない以上、回りの悪魔どもに食われておしまいかもな」

ワストが青ざめた顔をしている。

それは雷鬼もシーラも同じことだった。


それほどまでに人間は非力だ。


悪魔が呻きながら近付いてくる。

人の血を肉を骨を喰らいに襲いかかってきた!


ガルーダが吠える。

紫の炎を吐きながら辺りを業火に包む。

フレア、メディス、ヘラクレスが応戦するもガルーダには敵わなかった。

[目を覚ました]ガルーダは赤青緑の炎玉をバラバラに撒き散らし、紫の炎で上下左右、前後も含め全方向に吐き近付けさせないでいる。

「お前らはもう終わりだぁぁ!ガルゥゥゥダァァァ!」

その時、フレアの体が猛烈に赤く灯り、灼熱を纏いだした。

「フ、フレア!……この感じは!まさか。フェニックス!?」

フレアの体から現れた聖鳥は、辺りを真昼の明るさに変えた。

「ヘラクレスさん。こんなにも早くお会い出来て光栄です。」

「あ、何故?」

「龍神に呼ばれました。行かなくてはいけません。まぁその前に……」

フェニックスが話し終わると羽根をバッと広げ、その瞬間ガルーダの体を覆うように、巨大な丸い塊が包んだ。

橙色のその丸い塊は、疑似太陽。

一瞬でガルーダを包み、一瞬で炭も残らぬ程に消し去った。

ガルーダのうるさい遠吠えが一瞬にして消え、異様な静けさが彼らを襲った。

「ソナタらはよく戦いました。だからもうお帰りなさい。ここより東へ十里行った所へ船を呼んであります。それでまず一番近いビーストタウンへ行きなさい!さぁ早く。巻き込まれない内に」

それだけ言うと、フェニックスは翼を羽ばたかせて、遠くへ消えた。


渦をかくように両手両足に巻き付いた魔剣紅で、零は師匠ダークと戦っていた。

「どうした?そんな程度では私は越えられんぞ?」

「戦いの最中では喋ったらいけないんじゃなかったか!」

その時、突然零の動きが止まった。

身体全体から、蛍ように緑色に発光したと思えば、フッと光が消えた。

上には、緑色の龍が浮いていた。

それはナートゥーラ・シルウァを抜けて、自然神の(やしろ)へ訪れた時、見た緑色の龍。

自然神そのものだった。

「これはこれは……いつかお目にかかりたいと思っていた……」

ダークが興奮気味に言った。

「自然神………どうしてここに?」


《若い少年よ。君が其ほどまでに力を欲する理由は何だ?》


自然神を見たときふと、零は自然神から訊かされた言葉を思い出した。


「思い出したか?零よ。あえてもう一度訊こう……」


[お前が其までして力を欲する理由を教えておくれ]


《 私の師匠が今、間違った方向へ進もうとしている。師匠には返しきれない程の感謝がある。だから、力が欲しい。ここに来るのが遅すぎるぐらい、後悔している自分の力のなさに憤りを感じるが、ここで退けば私は何しに生きるかを見失ってしまう。今こそ、貴方の力が欲しい》


かつて零が自然神に言った言葉を思い出した。

果たして今、それを果たせているのだろうか?

果たせて今、それを実現出来ているだろうか?


《ここで立たなきゃ、ダークさんを救えねぇ。ここで立たなきゃシュウが報われねぇ》


そう言った時、零は自らの寿命を削ってまで自然からを力を借りて、自然神の呪縛から解き放たれた。


(そうだ!ここで俺が負けたらダークに殺されたシュウが報われない。今までの想いをここで無下には出来ない!)


「俺は、あの時と変わらない。あなたの力を持ってしても、尊敬していた師匠を、救えなかった。兄弟子の死を無駄にしてしまった。俺は……弱い…。分かっている。そんな事は分かっている。だから!もう一度だけ!」

ダークの方に顔を向けた。

樹力を上げて、もう、自然神の継承者でないから、無限には自然の力を借りる事は出来なくなったが、それでも零は、師匠ダークを救うべく対峙した!

「ダークさん………あなたを救う!」

一瞬ダークは笑ったように見えた。

名前の割に似合わない白装束を纏って、黒い長髪の男の顔からは、彼が何を考えてるのかは読み取れなかったが。


「零よ。この勝負。早めに決着を着けるんだな。でないと神々の争いに巻き込まれれば継承者でない今、生きていれると思うなよ…」

そうして、自然神は遠くに飛んでいった。

龍が過ぎ去ったので、風が彼らの髪を乱した。


「零、本当に成長したな……さぁ、自然の神がああ言っているんだ。早く決着を着けようか?」

零はそれには答えず質問を送る。

「その前に訊きたい事がある。ダークさん。あなたは本当は何がしたかったんだ?」

嵐の前の静けさは過ぎ去り、既に嵐は来ていたが、その最中に師弟の最後の会話が始まる。

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