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Zero  作者: 山名シン
第4章
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剣山ゲリラの死・二つの火の神

ゲリラ、フレアの老小コンビは、特にフレアの方は突然の豪雨と雷によって火の力を上手く出せずにいた。

「しゃあないのぉ……また寿命を縮めるが、彼がやられれば元もこもない。」


[雅王拳…(わし)…グリプス‼]


雅王拳はビーストにいる雅王の戦士から力を一部借りる事の出来る能力。

完全にビースト化する事は決してないため、雅王拳を極めても人型に留まる。


ゲリラの口が、鋭利な嘴に変わり、腕はライオンを意識した爪が延びていく。

体は真っ白に染まっていき、背中から羽根が生える。

髪の毛が後ろに伸び鷲の頭を彷彿とさせる。

ゲリラが変身出来るのは上半身までだ。

瞳の色は樹力で濃い緑色をしている。

「…ゲホッ……さ、いつまで持つかのぉ?」

小さく吐血し、手を後ろに目一杯伸ばす。

ブンッと振るうと、風と大地が一気に、初めからそこに道があったように、通路を作る。


ドドドドドド‼


その道はガルーダを包み、ゲリラと一対一に持ち込んだ。

直線の大地の壁が出来る。

「……グルル……ぐ、ががが、ぐ……」

ガルーダは少し苦しんでいるようにも見える。

しかし、それは錯覚だった。


「ガルゥゥゥゥゥダァァァァ!!!!!!」


突然の咆哮と、一気に増した豪雨がガルーダの士気を上げる。

と、同時にゲリラに突っ込んできた!

「雅王拳……逆爪(ウギス)

嘴を尖らせ、両手に剣を持って突っ込んでくるガルーダに、構えた両の爪がギラリと光る。

(ゲリラの)ライオンの爪が消え、手を持ち上げるとガルーダが宙に浮いた。

五本の爪が顔、両手、両足を捉え、磔にされたように伸び刺さり食い込んでいく。

そのまま持ち上がっていき、もう片方の爪を構える。

その間ガルーダは暴れているが身動きがとれない。

ゲリラが腕を振り爪で切り裂こうとした瞬間、目の前が煙に変わり、視界を殺す。

そしてーーー。


大爆発が起こり、二人を囲んでいた大地の壁が焼失した。

一番近くで受けたゲリラは満身創痍だ。


「酷い雨ね。フレア、ちゃんと戦えてるかしら?」

「…大丈夫よ、ゲリラさんがついてるもの。」

「あ、見つけた。フレアよ。」

ヘラクレスが目を飛ばして、周囲を見渡しながら走る。

その時、大きな爆発音がした。

(…あれって確か、グリプス…ゲリラさん、無茶だわ。伝説系の雅王拳は体に負担を掛けすぎる。)

メディスは心配していた。


雅王拳はビーストの雅王の戦士から力を借りる技。

つまり、借りる量が多ければ多い程体の負担が大きくなる樹力と同じように、ビーストの存在が巨大で有るほど負担が大きくなる。

この場合のビーストは、伝説上の生き物や、幻の生き物、絶滅した生き物等がそれに含まれる。


フレアは何も出来ず佇んでいる。

(……俺は何も出来ない!…ヘラクレスも…ゲリラさんも守れない…!)

絶望の中フレアを呼ぶ声が、確かにはっきり聞こえたがヘラクレスではない、聞き覚えのない、「少女」の声だった。

ーフレア!ー

(…誰?どうして俺の名前を…)

ーフレア!ー


緑、緑、赤、青、緑、緑。

順番にだが、バラバラに飛んでくる炎玉を大火傷を負ったゲリラには打つ術がない。


[雅王拳……玉犀!]

「お願い間に合って!」

ヘラクレスは目を飛ばしている為、足元などは見えていない。

しかし遠くを見通せるのでゲリラのピンチをメディスに語っていた。

メディスは全速力で走った。


ドガァァァン!!!!!


目の前だった。

それは本当に目の前だった。

フレアの目の前。

メディスの目の前。

二人の目の前でゲリラは………。


…死んだ。

かつて火の神は二柱いた。

一柱は不死鳥と呼ばれ人々に(わざわい)を起こしていた。

一柱は聖鳥と呼ばれ人々に幸福を授けていた。

だが、昔人々が共通の言語を話していた時、人々の唯一の信頼出来る清涼水である「アムリダ」を飲み干してしまった事をきっかけに豹変したのだ。


聖鳥と呼ばれ幸福を授けていたその火の神はアムリダを飲む事によって七色の炎を吐き、飲み水を失った人々は飢えに苦しむようになる。

ガルーダは最初からこうなる事を想定していたのだ。

共通言語を話し共通の物を平等に分けていた創世記の時代、食糧難は必須だった。

全ての人が同じように全ての物を分け合っているいるのだ、いずれ底をついてもそれは必須だったのだ。

あと数年もしない内にアムリダは底を尽きてしまい、人々は飢えに苦しんでしまう、そうならない為に、あえてガルーダはアムリダを飲み干し悪に染まる事で、ある意味では人々は「救われた」と言ってもいいかもしれない。

だが、良かれと思い行った結果は、気付かずに減らすだけ減らしていく資源を人々は差をつけず平等に分けて共倒れを防ぐ為にアムリダを飲み干したというのを、人々は最厄(さいあく)の象徴と捉え、神々に抗議した。


「あの神の名を語る(あく)き火を消せ!あれは神への冒瀆だ!今すぐ追放せよ!」


争いを避ける為に、自分達で資源を大切にして欲しいと願いあえて悪に染まったガルーダはそれ以降、「火の神」と名乗るのを禁じられ神々の世界より追放され、一億年地中に封印される刑罰を負った。

そして一億年後、創世記と呼ばれた時代が終わり、現代の新世紀に突入した頃の、当時幻獣として名を馳せていた氷の獣「アイスアウィス」と共に二大厄災として今に語り告げられている。


()(わざわい)(もと)

そういう迷信が広まったのはいつ頃からか。

不死鳥フェニックスはまさに、禍そのものだった。

人々に限らず生き物にとって「食べる」というのは生きる上で絶対に避けては通れない、いや、避けられるはずのない事柄だ。

健康に長生きするように、また肉等に含まれる毒や寄生虫などの害のある物を焼く事、あるいは熱する事で死滅させて始めて食べる事が出来る。

人間は欲深な生き物で、他の生き物であれば体の中に抗体があり毒を無毒にしてくれるし、味などを気にしもしないが、人間は違う。

無毒にしてくれる抗体も無ければ味を気にしない訳にもいかない。

料理を美味しく食べる為に、火を使い調理する。

火は食に置いて切っても切れない関係にあると言えるのではないだろうか?

それに火は人間の心を癒す効果もある。

火は火傷を負ったり人を殺す道具として使われるが、元々は疲れきった人々に癒しを与え、そして美味しく調理する為に使われるものなのだ。

つまり火は「平和の象徴」と言っても言い過ぎではないかもしれない。


しかし、結果は全くの別物だ。

火は禍の元。戦争の元。

そうやって生き物を殺す兵器として使われるようになっていく。

すると必然的に火の神と呼ばれるフェニックスは禍の化身とも呼ばれるようになり、徐々に神としての尊厳を無くしていく。

それでも神として呼ばれる訳は、不死鳥であるが故だろう。

人間の永遠の夢でもある「不死」とはいつしかフェニックスを尊敬の念で見るようになる。

不死であるから神として一応の尊厳を保っていられたのだ。

またいつしかフェニックスにはある迷信が付きまとうようになる。


「不死鳥フェニックスの心臓を喰らえば、不死になれる!」


そしてフェニックスは人々に追われるようになる。

一時は悪魔に心を売り、サタンのしもべとなるおかげでその後は追われる事は無くなったが、サタンが倒れるとまた人々に追われる日々を送るようになる。

最終的に辿り着いた先がヒールタウンの最高峰で、[12の聖地]である「レッドストーン」である。

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