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Zero  作者: 山名シン
第4章
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ナデシコ

《お母さん!お父さん!どこなの!私はここにいるよ!》

母だと思っていた使用人の事を母と呼び、父だと思っていた使用人の事を父と呼んだ。


岩人形の破片が崩れ、ナデシコに向かって飛んでくる。

(…避けなきゃ…)

ギリギリでかわしているつもりだが、肩や腕をかすめてしまい、青いアザを作る。

樹力のコントロールもままならないほど弱っていた。

「グゴゴ……」

鈍い声で笑う。

ゴーレムの岩が無慈悲に襲う。

悪魔には手加減はないと言われ続けていたが、今のゴーレムは完全にナデシコに対し手加減し、遊んでいる。


《今日は私の誕生日なんだよ!お母さん!お父さん!どうして忘れてたの!》

5歳で出ていったナデシコにとって、誕生日など意味もないものだった。

母と父と思っていた人は、いつも忙しくしていた。

全くナデシコの相手をしてくれなかった。


四方八方を岩が囲む。

既に満身創痍のナデシコは、悟った。

その時突如地面に穴があく。

蟻地獄のように突然現れた穴はナデシコの足場をなくし、底無しへと突き落とす。

窟贄(テリア)……」

[ただの落とし穴]

しかしその穴は大陸(タウン)をそのまま穴をあけたもので、閉まる時は大陸がそのまま迫ってくるのと同じだ。

血の気が一気に引いた。

ナデシコの体に たまっていた僅かな希望の火を消した。


《待って!待ってよ!お母さん!お父さん!置いてかないで!お願いだから連れてってよ!》

どこへ行くにも何をするにも許されては貰えず、ただ一人家にこもる毎日。

5歳まで一度も家の外を見たことがない。


穴に落ちていく途中、上からも岩が降ってきてナデシコの体を痛め付ける。

アザが多く腫れ上がり、顔は見るに耐えないほどの顔をしていた。

大地が迫ってくる。

すなわち大陸(タウン)が迫ってくる。


『綺麗だろ?フフフ。どうしたんだい?悲しい顔をして。泣きたいなら泣けばいいんだよ。君は充分頑張った。よく耐えたね。偉い。偉い。』

小高い丘の上、一本の樹の側、幼い彼女の隣に座っていた目の見えない青年が一人。

青年は彼女の心の安らぎをくれた人物。

たった一度しか会わないのに、深く彼を想う。


(……私の人生って一体何だったんだろう?……)


ズゥゥゥン……………!!!


大地が静まり綺麗な平地へと変わる。

しかし、大地から沸き上がってきた大量の『血』が、彼女の人生を物語る。

その血の上に立つ岩人は、どんどん巨大になり、山をも越える巨体となる。

「……南"無"……」

超巨大岩石魔神ゴーレム対ナデシコ、ゴーレムの圧勝で終わる。


その時ーーーーー。


「キーン」


どこからか鈍い音が岩人の体を叩く。

音は振動になり振動は大地を砕き支配する。

「自然の最大音響(サウンドオン)


不適な笑みを見せるその男は、巨大過ぎる岩を眺め笑う。

「フフフ………」

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