因縁の対決
零の奇襲を機に、ゲリラ、メディス、ナデシコら雅王拳の使い手が下へ飛ぶ。
「ゲリラ戦法」
ゲリラはいち速く飛び樹力を用いて透明になる。
地に降り立つやいなや、星形の雷閃がとどろいた。
ピシャッッ‼
「速いわね。もう500は逝ったかしら?」
メディスが関心し、負けじと雅王拳を使う。
[雅王拳……犀!!]
メディスの鼻から犀の角が映えた。
着地と同時に「粉犀」を繰り出した。
地面を三方向へ一直線に攻撃が貫き、綺麗な穴筋を残す。
その直線上にいた悪魔達はまるでドミノ倒しのように、倒れ体は線を入れたようにえぐられていた。
「50は逝ったかな?うん!」
首を縦に振り好調だと思った。
ナデシコは風を操り突風を起こし、悪魔の一匹を蹴散らした。
そのままそうっと着地し、他の二人を遠目に見て、自分の力の無さを改めて実感した。
(凄い…二人とももうあんなに一気に倒しちゃってる。あんなには出来ないけど私もやれるだけはやろう!)
上に立つビーストと竜の交戦も開始していた。
半分を下の悪魔に寄せて、半分を竜とぶつける。
その中で、両者一際目立つ巨大なもの達がいる。
雅王の戦士の長「ライアン」と、竜の神「龍神」である。
「久しいな、ビーストよ。何百年ぶりか」
その体躯は老害そのものだったが、異様な覇気を醸し出し近付く者はどれだけ強者であろうと一噛みで食い殺してしまうであろう。
ボロボロの羽根にボロボロの鱗、ボロボロの歯並び。
だが龍神から恐怖を感じるのは恐らく、その体は真っ白な色をしているからだろう。
「くだらない、貴様があんな者の下につくとは。。情けない限りだ、のお?龍神!」
ライアンはテレパシーでそう伝えた。
人語は話せないが相手を睨み付ける事で、言葉を投げる事が出来る。
だが、いくら挑発しても目の前にいる龍神は、謂わば自分の「進化系」である。
[獅子は百獣の王となって空を舞う。それは時が経てば龍へと変わる]
龍神の体毛がライアンに似ているのはかつて龍神も、ビースト、雅王の戦士であったからだ。
龍とは獅子の顔を持ち、爪を持ち、牙を持つ。
そして羽根が生え天を舞い、百獣から無限の獣の王と生まれ変わる。
生と死の狭間を司っていた過去は消え、全ての死を操る死神へと生まれ変わるのだ。
「死神こそが本来の龍神である」
ただ獅子であった名残の為に体つきは雅王の戦士と同じ白い体を持つ。
そして二つの両雄が放つ激昂は世界中を震撼させた。
グォォォォォォン‼
白と黒の激突。
龍神の黒炎はおよそ似つかわしくない黒い炎を纏う。
その炎は、火をベースに風で威力を上げて雷で速度を上げ水で分散しないよう留める。
白い方は、灰である。
灰と言えどただの灰ではない。
これもまた炎だ。
触れればたちまち灰と化し塵芥にしてしまう。
火をベースしてはいるが火傷の能力はない。
但しこれには連発できるというメリットがあり、その白い炎を重ねる度に威力が勝る。
龍神の黒炎のように直線ではなく、白炎は球状の焔玉だ。
灰に変える能力は万物全てに対応出来うる力を持ち、たとえ相性の悪い火であっても灰に変える事が出来るのだ。
しかしーーーー
そんな白炎など龍神にはかすりともしなかった。
何故なら龍神は「黒炎そのもの」だからだ。
黒炎を放てば放つ先に「己ごと」飛ばすことが出来る。
その黒炎は徐々に形を変えて龍神はどんどん縮んでいく。
「無限に消えない最強の炎」
それが龍神でありイコール黒炎でもある。
「水爆拳‼」
叫んだ時水が弾け爆発を起こした。
「樹力流し……」
意識を集中し樹力を上げる零は迫る水を自らのエネルギーに変える。
持ち上げ操り、今度は零から迫る。
「水樹」
ラージが吐いた水を操り鞭のように叩き、体を貫いた‼
しかし決定打に欠けていて、ラージシャークのその硬い鱗に傷一つつけれなかった。
「もう一回いくぜぇ‼……水爆拳」
次の一撃は至近距離からの水爆拳だった。
「樹力流しは自然を操るだけではない。お前の拳を受け流す!」
ラージの吐いた水をベール状に体へ纏いつつ拳打を受け止めた。
その衝撃でラージの地面はえぐれたが零の地面は無傷だ。
「この衝撃を受け流してやるよ…」
握ったラージの拳に水爆拳の威力を受け流す。
「……ッッ!!」
ラージシャークの内側から水爆拳の威力が戻り、血を吐いた。
「へぇ……血…青いんだな!!」
「勝利の余韻に浸るのは良いが……………それだけか?」
ラージシャークの目が白目を向いた。
鮫は捕食する時目が白くなるという。
つまり本気になった証拠だ。
白目を向き黄色い瞳孔が縦一閃になる。
その異様な目を見て零は一瞬怯む。
その怯んだ隙を見てラージの鱗が逆立ち棘の針が水圧ジェットのように飛び零の体を串刺しにした。
ズシャァァァ!!!!
「へぇ……血…赤いんだな……」
ギラリと目が光った。




