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Zero  作者: 山名シン
第4章
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一息つく想い

シーラと雷鬼が龍鬼を探すこと半年あまり。

しかし、いくら探してもやはり大陸(タウン)だ。

本来タウンは国や大陸やその土地で一番大きな場所全体を指して「タウン」というので、一つ一つの村や市になると呼び方が違ってくる。

家ぐるみで大きくなる者もいれば、少数精鋭を主とする一族間で動く者もいる。

剣山家や、龍牙家は言わば「金持ち集団」で回りにいる村や一族を買収し強く大きく成り立っている組織のようなものだ。

ゲーラ一族や薬膳一族などの「一族」は、血縁関係だけの集団で、他の血が入っている者などは一切受け付けないような秩序が引かれている。

全タウンでは、圧倒的に一族間で動く者が多く、いまだに都市や国という概念はあまりなくそれらは少数派なのだ。


10、20、いや100はいる。

電波を読み取り敵の数を把握する能力を持つ、雷鬼は後ろからくる何者かの気配を感じていた。

「…おい、つけられてるぜ?結構数がある。どうする?」

シーラは後ろを振り替えるが、岩壁だらけで何も見えない。

正確には霧が立ち込めていて視界が少し悪くなっている。

「……?……特徴は?」

「お前の肩のそれと同じのがついてんぜ?」

「……!!……向こうから来てくれるとはな。好都合だ」

「どうする?俺の方が速い。殺ろうか?」

「一体だけ残せ。後は自由でいい。」

「…さて、久しぶりに暴れるなぁ。」

雷鬼は光速で消えた。

音が後から追い掛ける。


シャーク一族総勢、130匹が鈍い足を引きずり走る。

「おいおい。遅すぎるぜ。ちゃんと走ってんのか?」

先頭を走っていた鮫が前にいる光に気付いた。

途端に、後ろの連中に指示を出し水を吐いた。


[アミダ(らい)]


雷鬼が足を踏み込んで光の道を作る。

その光の道は、130匹のシャーク達を包み逃がさない。

「水爆拳‼」

一人が吠えると、一斉に吐いた水を弾きだした。

ダダダダダダン‼

凄まじい音を立てて爆発が起こる刹那、雷閃が轟きそれは不発に終わる。


ピカッッッッ‼

ドゴンッッッッッッ!!!!!


光が通りすぎた後、音が遅れてついてきた。

バリバリと、雷がほとばしり一瞬でシャーク一族を黒こげの灰にした。

雷鬼はシャーク達の最後尾に立っていた。


真ん中に目を真ん丸く見開いた、一匹のシャークはこの状況についてこれず、ただ立ち尽くしていた。

気付いた時は、目の前にシーラが立ち「水の刃」を作り出し顔の前に手があった。

背後からは、ピストル型に指を添えて雷をバリバリ言わせて逃がさないようにしている。

シャークは膝をつき、両手を上に挙げて戦意消失したようだ。

海の紋章は深い海の底、とても人間では辿り着けないような場所に置いてあるという。

シーラ達を襲ったシャーク一族は、裏切り者のシーラを殺れば自由にしてやると、マーラとカーラに脅されていたらしい。

「それにしても、またここへ戻ったはいいけど、たいした情報が入ってこねえな。」

雷鬼は一刻も早く、兄龍鬼を探すべくウォールタウンまで来たのだ。

強いて言えば海の紋章などどうでもいいと、そう思ってもいる。

それと同時に、故郷に置いてきた許嫁である「プルクラ」の事も気にかかっているのだ。

しかし、プルクラに会いに行こうともいつまた、ダークが襲ってくるか分からない状況で迂闊な行動は避けるべきだとも考えている。

「だが、紋章の在処は分かった。やはり寒熱橋の真下の海で合っていた。すぐ行くぞ。」

「はぁ……ここから何千里あると思ってんだよ。無茶苦茶だなお前。」

「仕方無いだろう。俺は今すぐ海の紋章が欲しい。」

「……あっそう……」

呆気にとられた雷鬼は諦めてシーラに付いていった。

(…兄貴。どうやらまだまだ探せそうにない。悪いな)

それからシーラの力を使い海を渡り、半年でクールタウンとヒールタウンを結ぶ「寒熱橋(かんねつきょう)」についた。


零達と別れて、一年が経った。

残り一年でカーラマーラ兄弟と戦わなければならないから、半年間で海の紋章を見つけられない場合は、諦めるしかない。

決戦は一年後、その日はちょうど太陽が月に隠れる日だ。


目を覚ますとそこは見知らぬ家の中だった。

いや、家というには簡素で無駄な物など一つも飾っていない言って悪いがちんけな風景だった。

サケルドーサーとして、多くの地位を得たせいだろうか、どうも庶民の感覚を忘れている気がする。

起き上がろうとするも腹が痛くて動けない。

(…ん?包帯。いつの間に?…)

プロセウスは自分が手当てされている事に気付き、ここの(あるじ)に礼を言いたかったが、なんせ腹が痛いので大きな声も出せずじっと獣の皮の中で眠っていた。

すると奥の方から、若い娘が現れた。

膝を痛めないように、服で覆いながら正座し、木で出来た椀を持ってきた。

「大丈夫ですか?酷くうなされていたようですが。あ、それと食事を持ってきました。少し熱いので冷まして食べてください。」

その娘はそれだけ言うと、椀を耳元に置き、早々と去っていった。

(……あの娘は一体誰なんだろうか?しかし綺麗な娘がこんな小汚い家に一人で住んでいるのだろうか。何と勿体無い)

プロセウスは、娘の後ろ姿を見送った後、横になり椀をすすった。

どうやらスープのようだ。

薬膳メディスに教えられた薬草の味がするから、薬味スープだろうとも思った。

が、意外に美味だった。

一口飲むと、また仰向けになって一息つき眠った。

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