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Zero  作者: 山名シン
第3章
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修行編・其の一

「雅王の戦士ー修行編ー」


「まずは、樹力の使い方をマスターせねばならんな。」

ゲリラがそう言い、零を呼ぶ。

ゲリラは孫の肩をポンと叩き、ニコリと笑うと、説明しだした。

「樹力とは呼吸と同じだ。大きく息を吸うとその分大きく息を吐き出さなければならん。つまり、樹力を上げて自然の力を操るには、どうしても大きく樹力を上げねばならん。そして、同時にその分をぴったり返さなければならん。」

零は真剣にゲリラの話を聞いていた。

脇に座って、メディスとナデシコが零達を見つめていた。

「では、説明しながら実践してみよう。まずは、タツキリョクになれるじゃろ?そこまで樹力を上げてみぃ。」

言われた通りに、零は神経を集中させて、樹力を上げた。

目を開けると、見事な濃い緑色に変色していた。

すると、ゲリラも樹力を上げるも、零とは色が違う。

「樹力は力に制限がかかっておる。その制限の限界が、黒じゃ。いや、黒に近い濃い緑色、じゃろう。そこまで上げて、自然を操ると樹力を知らん者からすれば、その技はまるで神そのものだ。木を揺らし、地面を揺らし、風を操り、火を操り、水、雷を操るその姿はどう見ても神にしか見えん。じゃが、わしらは所詮人間。そんなもんを操ってしまうと簡単に死んでしまう。本物の神様はそれを恐れて、樹力に段階をつけた。まず、一般的なのが、全て字は同じだが、キリョク、ジュリョク、そして、タツキリョクと、三段階に分けたんだ。そこまでは知っておるな?」

「………はい。」

「うむ。では、続けよう。」


そして、ゲリラは拳を構えた。

零には、防御するよう指示すると、顔の前に腕を持っていき、固く閉じた。

「例えば、10の攻撃がくるとしよう。すると、防御も10の力で防ぐ。どちらもの樹力が同じなので、攻撃の威力も防御の威力も何も無かったように、そのままになるだろう。しかし、衝撃は違う。10の攻撃を10の防御で防いだとしても、余った5の衝撃は防御している側に伝わって腕が痺れるであろう。つまり、その時、樹力を用いるのだ。10同士の攻防の後に続く余分な5を防ぐ為に、樹力を使い、その衝撃を地面に流すんじゃ。地面から貰った自然の力を使えば、その衝撃はまた何も無いように消え去る。まぁ、コツはあるが上手く操れる事が出来れば、自然も自分自身も傷付く事なく相手の攻撃を受け流す事が出来るじゃろう。」

そう言うと、零は腕に地面から借りた力を自分の力に変えて、ゲリラの拳を受け止める。

二つの樹力がぶつかったのだが、端から見ると、ただゆっくりと二人が見合っているだけに見える。

しかし。

その直ぐ後に、零の後ろの地面から衝撃波が立ち込めて、ドォォォン、とオ音を立て砂埃をぶちまけた。

「はぁ。惜しいな。上手く攻撃と防御の釣り合いを完璧に合わせたはいいが、やはり衝撃の方までは頭が回らんようじゃな。」

確かに、相手の攻撃と自分の防御の強さの違いを見極めるのはそう難しくはない。

矢印で考えれば、相手が向かってくるのは分かりきっている事だから、それに合わせて待ち構えるだけでいい。


[攻撃➡⬅防御]


しかし、その後にくる衝撃、つまり、本来の攻撃の中身の部分は、どれ程の威力かは見極めというより、これは受けてみて初めて分かるもの。

[攻撃➡⬅防御➡衝撃➡?]


これを一瞬で地面に受け流すのは、相当な技術が必要だ。

それをしかも戦闘中にしなければ、全ての攻撃を受け流す事は出来ない。

そして、この技を修得してしまうと、敵は、自分の攻撃が全く効いていないと錯覚し、自信を無くしてしまう。

なるほど、これは確かに樹力ならではの力だろう。

樹力の本髄は、「自然から力を借りる」事。

つまり、人間であってもそれは自然の対象である。

人間の拳を借りてほんの一瞬自分の力として、操ってしまえば、攻撃を受け流すなんて事は訳はない。

口では何とでも言えるが、これ程難しいものはない。

零の父、カシラはこの樹力の力の全てを極め操ったと言うから、感無量である。

カシラと戦った敵は、愕然とするだろう。

全く攻撃が訊かないし、相手の攻撃は風や火があればそれを操り、攻撃出来るのだから、カシラが最強と言われ続けたのも無理はない。


「さてと、これで樹力の基本的な戦いの仕方は終わりじゃ。これからは、わしと実践を繰り返し、この受け流しを完全に修得してもらう。いいな?」

零は目を見開いて、力強く頷いた。

「はい‼」


「では、魔剣紅の使い方を伝授しよう。まぁこれは、わしが発案したわけでは無いが、しかしこれは便利だ。覚えておいた方がいいかもしれん。」

すると、ゲリラは掌に魔剣紅を造り出した。

「これを持ってみろ。」

零はゲリラの紅を持つ。

「うむ。………………………7……………8」

「あっ!」

普通なら約8秒で消えてしまう魔剣紅が、ゲリラから零に渡った後、いつも通りに消えなかったのだ。

「まず知っていて欲しいのは、紅はその所有権をいちいち変えれるということ。だからと言ってもう二度と紅が出せんようになる訳じゃない。」

そうして、またゲリラの掌に紅が現れた。

しかし、たった今出した紅は8秒後に跡形もなく消え失せてしまった。

「このように、紅の力はいっぺん他者に手渡ってしまうと、本来の力は出せん。そして、渡った紅を、一度放ってしまうば完全に所有権を獲得出来るってゆう寸法じゃ。ほれ、いっぺんその紅を地面に放ってみぃ?」

零は言われた通りにした。

すると、不思議な事に、ゲリラから受け取った紅が、8秒後に消えたのだ。

「す、凄い。でもどうして?何故、紅は消えたんだろう?」

「[創造]じゃよ。想像イメージし、創造クリエイトすると、紅はいつでもどこでも現れるようになる。それこそ魔剣足る所以ともなっておる。無限に出せる紅は何の制限もない。これが創造の神の力にもなっておるんじゃ。」


全く知らなかった事をあっという間に語ったゲリラを改めて零は尊敬した。

樹力の事といい、魔剣紅の事といい、ゲリラは何故そこまで詳しいのかは結局謎のままだったが、それでも自分の為の修行であるからそんな事は後から追求すればいい。

余計な詮索はせず、ただひたすら修行に励む。


「さぁ。これを踏まえて、紅の力の第一段階の使い方を教える。いいか?」

「はい。」

第一段階、紅そのものを造りだし、何本もの紅を完全に操る事。

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