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Zero  作者: 山名シン
第3章
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宣戦布告ー悪魔対雅王

ゲーラ一族跡地に戻ったカーラとダーク、そして幻獣の二匹は、その光景に驚いた。

龍鬼と大和が、いないのだ。

しかし、カーラは焦りを見せず、目を瞑った。

「カーラ様、どう致しましょうか?あの者共を?それに今鬼に逃げられてしまっては……………」

「分かってる。黙ってろ。」

カーラの創造の力で、大和の居場所を突き止めているのだ。

カーラは未来を見据える力と共に、その者が今どこにいるのかもまた見えるのだ。

顔と、名前さえ分かっていれば世界中のどこにいても探し出せる。

しかし、欠点はある。

場所を特定するだけで、そこまでの道程が分かる訳ではないということ。

だが、当然自分の知っている場所ならば探す事は容易であるから、今までその能力でカーラは、敵を見つけ出せなかった事はない。


「見つけた。他にもいっぱいいるな。大和、シーラ、零、剣、ふっ、ゲリラまでいやがる。場所は分かったが、それがどこかが分からない。知っているか?ダーク、動物の楽園のように見える。」

「動物の楽園………もしかすると、幻のビーストタウンにいるのかもしれませんね。彼らは。その動物達は、真っ白な姿をしてませんか?」

「あぁ、中央のライオンは妙にデカいが、真っ白だ。」

「やはり、恐らく、そいつらは[雅王の戦士]と呼ばれる獣の王者ですね。遥か昔に彦五十狭斧(ひこいさせり)族が、初めて手懐けたと言われる、神の申し子ですよ。」

「行き方は分かるか?」

「いいえ、申し訳ありません。」

「いいんだ。じゃあ、十中八九、近い未来に雅王の戦士と戦う事になるからな。相手がその気なら、僕らも準備しないとな。せっかく悪魔が手に入ったんだから。」


「それよりも、鬼だ。鬼を探すぞ。イナズマタウンにある封印を解きに行く、ついてこい。」

「はい。」


マーラとメドゥーサ、ヘカトンケイルらが合流し、先に戻ったカーラ達に追い付く。

「どう?腕の調子は?」

「まぁまぁだな。」

「それなら良かった。」

「いつまで持つ?」

「そうね、2~3年かしら。」

「それまでに海の紋章を見つけないとな。」

「それはいいけど。あ、そうそう、こっちに仲間呼んだけど大丈夫だったかしら?」

「構わない。もしも竜の群れが来たとき対抗出来るからな。」

「じゃあ、よかった。ありがとご主人様。」

「……………」

獅子の森を抜けて、ゲーラ一族跡地に戻る途中だった。

マーラの影から、ダークが現れ、鬼を復活させに行く、と告げた。

もう一つ、雅王の戦士も近い内にやってくる、とも告げられた。


「鬼ねぇ。一時は冥界で一緒に住んでたんだけど、イナズマタウンから離れられなくなったって聞いてるわね。」

「そうか。では、こちらは龍鬼を連れ戻しに行くとしよう。そう遠くへはいってまい。」

「どうして?別にいいじゃないほっといても。」

「唯一の鬼の血を引く男だ。手懐ければ役に立つ。最も、逆もあるかもしれんが。」

「でも、鬼、言っても人間。本物、違う。」

ヘカトンケイルが口を割ってきた。

「ヘカトンの言う通りよ。人間の血の方が濃いわ。」

「いいや、鬼の魔力はそんなものじゃ薄まったりしない。現にあいつは鬼になりつつある。いつか化けるぜ。本物にな。」

道中ずっと、曇っていた。

どす黒く曇った空は、何かを予言していたかのように、黒い雨が降り注いだ。

「俺たちも、化ける日が来る。二年後に訪れる、太陽の光が失われる時に。」


カーラ、マーラ、ダーク、メドゥーサ、ヘカトンケイルが鬼の復活を試みる直前、空を飛んで現れた真っ白なライオンが目の前を阻んだ。

グルルルと雄叫びを挙げて、皆を見下ろすそのライオンは、テレパシーのようなものでカーラ達に言った。

「これより二年後、太陽が月に隠れる時、戦いが始まる。」


[宣戦布告だ!]


これを聞いて、カーラ達に動揺はなかった。

いつか来るだろうと思っていたからだ。

太陽が月に隠れる時、日食の日に、カーラとマーラは真の姿へ戻れるからだ。

カーラとマーラが、双子らしく声を揃わせて言った。

「受けてたつ!創造の前では何もかもが無力だと、教えてやる。」

皆の空気に緊張感が漂う。


すると、目の前のライオンが口を開くと、霧のような白いものを吐いた。

回りを霧が包み、気づくとライオンが何十頭も見える。

「写し出す(シャム)

そして、何十頭にもなった霧のライオンがカーラ達に襲いかかる。

それを全て、マーラが「魔剣 紅」で防ぐ。

ボフン、と雲散霧消したかと、思うと、また再生し、何頭かのライオンに変化する。

カーラは自身の未来を見る創造の力で、回りを見渡すが本物のライオンの姿が見えなかった。

臨戦態勢を整えていた、メドゥーサやヘカトンケイルもまた、襲いかかるライオンに悪戦苦闘するも、しかし、全て霧になって消えてしまう。

数分後、全ての霧が晴れると、ライオンの姿は欠片も見えなくなっていた。

しかし。

「ハハハハハハハハ。また会おうぞ。太陽が月に隠れる時に。」


それまでは気付かなかったが、カーラ達のいた地面は、灰だらけになっていた。

触ってみると、灰をぶちまけたのではなく、本当に灰になっていた。

1m程深く、全て灰に変わっていた。

もしも、これがあのライオンの攻撃だったとしたら、自分等に少しでも触れれば、跡形もなく、灰となって風と共に消えてしまっていただろう。

メドゥーサが舌打ちすると、皆振り返り、想いが一致した。

「二年後に待ち受ける戦いに勝利すれば、解放してやる。それまでは、戦ってくれるか?悪魔ども。」

「ふんっ。ガキに命令されたくないけど、仕方無いね。いいだろう。」


これらを遥か彼方の地平線から覗いていた、一人の青年は歩きだした。

桃の戦士対鬼との決着をつける為、額に伸びた鬼の角をさすりながら、遥か遠くへ歩いた。

(雷鬼、お前が我が先祖の憎き敵である、彦五十狭芹族の生き残りである事は分かっていた。予言の力を持っていた彼らと同じ、お前は見事に予言を的中させていたからな。薄々感じてたさ。だけど、お前を恨んだりはしない。俺たち、血の繋がらない、[兄弟]だもんな。)

「大和、お前が考えている事は分からないが助かった。どうやら俺は今、ここにいてはいけないらしいからな。」

龍鬼は一人、真実と向き合う為に、イナズマタウンへ、向かった。

故郷である、旧名「鬼ヶ島」へ。

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