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心の果て

私は真っ暗な空間の中にいた

「やっと大事な物を失う覚悟が出来た?」

頭に響く声


『その前に一つ聞いてもいい?』

「あなたには全部説明したと思うけど?」

確かに願いを叶える方法は教えてくれた


『代償は私が選んでもいい?』

「代償になるのであれば何でもいいはずだけど....同じ価値のあるものが必要になるよ?」


『良かった。じゃあ....』




病室に落ちていた小さな箱

千夏はこれを見たことがある

「これって知恵ちゃんが言ってた....」

これが願いを叶える箱ならどうしてこんなところに?


そういえば知恵ちゃんは話してくれた

強く願えば箱に入れる

大事な物を失う代わりに願いを叶えてくれる

知恵ちゃんの願いはただ一つ。賢治君を救うこと


代償は...?

嫌な予感がした

「...知恵ちゃんを救いたい」

小さな箱が開く音がした





「今なんて?」


『私の命と引き換えに賢治を救いたい』

「え....?」

予想外な答えだったらしい


『あれ?分かってるんじゃなかったの?』

「私はあなたの欲望から産まれたの。そんなのわかるはずない....」

『私の...欲望から?』

「そう....」


「あなたが悪い事だと決めつけてきた欲望」


「あなたはいつもいつも感情を殺してきたから!

負の感情も。正の感情も。でも.....でも...どうして?」

声が震えていた


「何であなたはいつもそうなの?しんどい時はしんどい辛い時は辛い苦しい時は苦しいって言ってよ!」

「嬉しい事や楽しい事があったのなら喜んでよ!」


「どうして一人で抱えるの?どうして自分を責めるの?どうして逃げ出そうとしないの?どうしてやりたいことをしないの?どうして.....どうして私はこんなに苦しいの?」

目の前には泣き叫んでいる私がいた


「私を助けてよ....どうすればいいの? 私は存在しなければ良かったの?」

彼女は泣き崩れてしまった

私はやっと気付いた

私の心は助けを求めていた




「知恵ちゃん!ここにいるの?」

聞こえるはずのない声が聞こえた


『千夏ちゃん!?どうやって?』

咄嗟に声が出てしまった

「そこにいるのね?」

千夏ちゃんには何も知らせないつもりだったのに...


「....見つけた」

彼女が来たとしてもやることは変わらない

「何をするつもり?」

『.....』

千夏ちゃんの肩が揺れていた


「賢治君を救おうとしてるの?」

『....うん。 そう』

「それで知恵ちゃんは代わりに何を失うの?」


『私の命。だよ』


千夏ちゃんは手を振り上げて私をビンタした

「私に何で言わない....!」

『......』


「私をもっと頼って....」

千夏ちゃんは私を強く抱きしめた


『ごめんね...ごめんね...』

「知恵ちゃん?戻ろう?」

『....それは出来ない』

「....どうして」

脳裏に賢治の笑顔が浮かんだ

とっくに覚悟は出来ていた


『だって私は...賢治のお姉ちゃんだから...。』

『箱よ!私の命と引き換えに賢治を助けて!!』

真っ暗だった辺りがどんどん眩しいほどの白に変わっていった

『千夏ちゃん ごめんね。でも私はこれで良かったの』

そう。これで全部元通りになる

あぁ でも私が消えれば私のもう一つの心も消える


ごめんね

あなたには重すぎるものを背負わせてしまった

あなたも救いたかった


もし...もし許されるのなら...せめて...せめて

辺りは真っ白になり意識が遠のいていった。








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