優しい想い
目が覚めると千夏ちゃんが目の前にいた。
どうやら一晩中私の傍にいてくれたみたいだ。
「あれ....もう朝か...ごめんね 私も寝ちゃってた」
寝ぼけ眼で彼女は私に笑いかけた
一晩中見ていてくれたんだろうか
『いえ... 昨日はごめんなさい』
彼女には何から何までお世話になってしまっていた
「謝ることなんてないの。それと...私のことはお姉ちゃんだと思ってほしいな」
少し意外な言葉だった
『......うん』
「顔を洗っておいで」
『ありがとう。千夏ちゃん』
なんとなく照れくさくて私は逃げるように洗面所へ行った
「....負けないでね知恵ちゃん」
『お母さん おはよう』
リビングには焼き魚の匂いが広がっていた
「あら 知恵ちゃんおはよう 千夏は?」
そういいながらもお母さんの手は動いている
『出勤の準備をしてるみたい』
いてもたってもいられず私も配膳の準備を始める
「そっか ごめんね 千夏を呼んできてくれる?」
『はーい』
廊下から外を見ると空は少し曇っていた
『千夏ちゃん。 ご飯の用意出来たよ』
「はーい 一緒に行こっか。」
彼女と並んで廊下を歩いていると本当のお姉さんのように感じた
「おはよう 千夏」
「おはよー お母さん」
まだ千夏ちゃんは少し眠たそうだった
「それじゃ 食べましょうか。 いただきます」
朝食は和風で整えられていた
焼き魚に味噌汁と卵焼きそれと...この赤い漬物は何だろう?
『お母さん これは...?』
「それはね トマトを漬けたものなの。」
......トマトのお漬物?
聞いたことはないけれど食べてみた。
『..うん おいしい』
柔らかな酸味と甘味が程よく濃縮されていた
お母さんはとても料理がうまいみたいだ
「良かった。 実はまだ試行錯誤しててね」
これで試作品なんだ...
『お母さん 私に料理教えてくれないかな?』
「そうねぇ それじゃあ今日から料理を手伝って貰っちゃおうかな。」
『うん 手伝わせて。』
『あと...千夏ちゃん。私も病院に一緒に行くね』
「...賢治君のお見舞い?」
『うん...』
「そっか...分かった。」