現れた箱
看護士は泣き疲れて眠った少女をじっと見ていた
隣にいる彼女の弟は目覚めないかもしれない
それがどれだけ彼女の負担になるかは容易に想像出来た
看護士としての私は出来る限り彼女に寄り添おうと決めた
じゃあ人間としての私は?
ただ願った。賢治君が目覚める事を。
古い神話の話
神々は美しい人間の女性を作り出した
彼女には二つの物が与えられた
一つ目は開けてはならない箱
二つ目は好奇心
彼女の好奇心....いや 願いは理性を越えてしまった
開けてはならない箱を開けてしまった
箱からはあらゆる絶望が飛び出した
たった一つの希望を残して
私は真っ暗な空間に居た。
ここはどこなのか? さっきまで私は病室に居たのではなかったのか?
そう思ったとき頭に声が響いた
「ここは箱の中。 あなたの心の中。」
どこから話しかけてきているのか?
「私に身体はないの。 だって私はあなたの心の一部なんだから。」
私の心の?いまいち状況が掴めない
「とにかく忘れないで。
あなたが強く願えば箱は開く。
あなたが願いを叫べば箱は叶えてくれる。
あなたの大事な何かを代償に。ね。」
その声を聞くと私の意識は遠くなっていった
次に意識が戻った時には私は病室に居た
左手には何かを握りしめていた
箱だった。
見たこともないような文字が刻まれた小さな箱
その見た目とは裏腹に禍々しい何かを感じる箱
夢ではなかった
これこそが私の運命を左右する箱だった
パンドラの箱(壺)の話と酷似していますが全く同じではありません。
私なりに改変しています。