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人の限界
私は呆然としていた
「高橋知恵さん どこか痛むところはありませんか?看護士の佐藤千夏です。」
声のする方を見ると看護士さんがいた
『看護士さん....?』
「うん。佐藤さんでいいよ。」
『佐藤さん....私達には何が起こったんですか?』
「......」
明らかに説明することをためらっていた
『賢治は?助かるん...ですか?』
「.....」
「...分かったわ。」
佐藤さんは全部話してくれた
バイクの運転手は運転中に脳梗塞を起こし即死だったこと。
運転手を失ったバイクが歩道に乗り上げたこと。
賢治君は....意識が戻らないかもしれないこと。
『何で.....コンピューターで管理されているんじゃ...』
コンピューターは人間の認識の限界を補ってくれる
例えば死角から車が来るのを事前に知らせてくれる
じゃあ運転手が運転出来なくなれば?
バイクの運転手は脳梗塞で即死だった。
賢治は重い怪我を負った。
私は? 軽い怪我で済んだ。
『どうして.....私だけが...?』
私にはもう限界だった
「誰も...悪くないの」
病室には少女の号泣する声が響いていた。