「偶然」
人間には認識の限界という物がある。
だからこそ認識の限界を越えた事を「偶然」だといった
そこで人は考えた
全ての物の動きをコンピューターで管理すれば「偶然」は限りなく少なくなるのではないか?と。
この考えは正しかった
「偶然」の事故は圧倒的に減った
しかしイレギュラーは必ず存在するもの
その時責任はどこにあるのか? 誰を責めればいいのか?
あるいは....機械に頼った事が間違いだったのかもしれない
私には13才の賢治という2歳年の離れた弟がいた
両親の記憶がない私にとって弟だけが私のかけがえのない家族であり親友だった
『知恵ちゃん。今日の晩御飯何にするの?』
賢治が笑顔で私の顔を覗きこんで言った
「うん?ごめん 何にも考えてなかった。」
ときどき頭に浮かぶ両親。という単語を振り払うように答えた
あと君はまだ私を知恵ちゃんと呼ぶつもりなのか?一応年上だぞ?ん?
『そんな顔には見えなかったけど.... 何か嫌なことがあったの?』
ふっと賢治は悲しそうな顔で言った
時々私は変なことを考えた。弟には私の考えが読めるのでは?と。
それぐらいに本当に人の気持ちの分かる子だった
「そんなことよりそろそろ知恵ちゃんって言うのはやめてね?」
とりあえず話を切り替えた。
『知恵ちゃんも俺の事を賢ちゃんって呼ぶからおあいこ。』
何がおあいこ。か。
私は姉である
その時だった。
『知恵ちゃん!危な』
賢治の言葉は遮られた
歩道に吹っ飛んできたバイクのせいで。
目が覚めると病院のベットだった
少し左手に違和感があるがどうやら私は無事だったらしい
隣のベットを見ると賢治がいた
身体にはたくさんの器具が付けられていた
「何で....?」
それ以上言葉は出なかった