序章 「Prologue」
オリジナルのSF小説です。アクションシーンが多めの、戦闘用アンドロイドが活躍するお話です。
スラムのビル街に、砂埃を上げた風が吹く。
漆黒の人型の機械は、男に照準を合わせる。
――――――ヴァ―サルマシン。2本の太い節足を据えたタンクから、頑丈なアームが伸びている。重厚な腹部にはコクピットを擁する、人型の機体である。両腕のマニュピレータは、巨大な銃を握る。
手にあるのは、160mm口径の、巨大なマシンガンである。今まさに、その銃弾が男へ向け、撃ち放たれようとしている。トリガーに、指が掛かる。
――――――次の瞬間、激しい旋風が巻き起る。地面は轟音を上げて割れ、地鳴りを上げた。
砂煙が上がる。その煙が一陣の風となって舞い散ると、長い緋色の髪が、繊細に靡く。そこには、一人の少女が立っていた。
胸から腹部を無防備にさらした、青い鋼鉄製のレオタードをまとい、腰元からスカートのように、白いシールドを垂らしている。
足を覆っていた、三角錐のバーニアユニットをパージすると、スラリと長く伸びた脚が現れた。
高い鼻梁に、小さな頬に睫の長い、大きな金色の瞳を覗かせている。
――――――それは美しい姿だった。
緋色に靡く髪は風に揺れ、朝日の照り返しを受けて、輝いた。