エピローグ
闘い終わったエコーが、倒れ込んだオージンに近づこうとする。これで一段落。後はビゾオウルや統治局と話を付ければいい。
ギリギリまで近づく。何故かこれ以上前に進めない。
「詰めが甘いのも珠に傷だな」
オージンが立ち上がる。すでにエコーから受けたダメージは回復していた。
見えない壁が黒光りする。オージンが作り出したバリアが宮殿全体を覆っていた。
エコーは慌ててバリアに力を加えて破ろうとする。
「やーいやーい! バーカバーカ! こっこまでおーいでー! フハッハハハハハハ!」
具現化した仮面を被らず、片手で顔に掲げただけのオージンがエコーをからかう。
気が済んだのか、仮面を砕いてフンと鼻を鳴らし、バリアに四苦八苦するエコーに言った。
「少しだけ待ってやる」
オーラの残量がないエコーは手を止め、オージンの言葉に集中した。
「お前が自分を認められるくらいに強くなるまでな。そして、今度こそ、お前がワタシを倒しに来い」
それを捨て台詞に、オージンは宮殿の奥へ姿を消した。
ワールドツリーに直接繋がるビフレスト回廊の階段を降りながら、エコーは表情を暗くしている。
自分に一体何ができたのだろうか。色んな人が協力してくれたのに、ダークサイドを止められなかった。
自分を殺すと豪語していたオージンでさえ、最後の最後で躊躇い、強くなるまで待っていてくれると言った。
結局、みんなに助けられているだけだった。
「まだまだ遠いなぁ」
この調子だと憧れのヒーローになるまでどれくらいかかるのだろうか。弱音を吐いている暇は無い。もっと強くなってスーパーダークネスと再戦しなければならないのだから。
階段の先に、人だかりが見える。ユキヒコとフィリップ、ジフやベベルにウェンボスたち、そして知らない集団。
よく見てハッとする。ジェノサイドの時に仲間と助け出した人質たちだった。階段を降りきると、一人の子供、エコーが助けたあの男の子が駆け寄り、花束を手に笑った。
「おねえちゃん、ありがとう」
花束を渡し、そこにいる全員がエコーへ拍手を贈る。
胸に溢れる感情を抑えきれない。自分の力で誰か一人でも助けることができたんだ、と確信し、もっと頑張ろう強くなろうと決意を固める。
零れそうな涙をこらえて口を結び、感謝の言葉に、エコーも笑って頷いた。




