二十二話 統治局上層部
「能力者機構のデルタがやられたようですな」
フッフッフッ。奴は四天王の中でも最弱……。
などと、つまらないことを言うはずもなく、円卓を囲んだ統治局の上層部にあたる面々はさほど深刻そうでもない顔付きで、サクラから経由された情報を元に話を進めていた。
「次は我々の番だな」
ガーランドがなんとなしに言った。死よりも恐ろしいことが自分たちの身に迫っているのにも関わらず、まるで他人事のように話す。
「はたしてスーパーヒロイックは、あのオージンに勝てるのか」
「どちらに転んでも構わんだろう」
ザガインは素っ気なくガーランドに答えた。強面に体躯のいい姿がここにいる誰よりも威圧感を放っている。
「おや、ザガイン殿。たしか娘さんは、スーパーヒロイックと共にオージンの側にいると聞きましたが」
「役目はすでに終わっている。スーパーヒロイックの成長過程をあれを通じて観察できた。上手くいけば、これから対立することになるかもしれない。その時にまた新しいデータを取れる」
からかうつもりでザガインに娘のことを振ったのに、そう返されて初老の男フェロンは、いけすかなそうに鼻を鳴らした。
「最大限にまで引き上げたダークネスとヒロイックの力。もうじき人類の長い歴史に答えが出る。ダークサイドの悲願、完全なる英雄。悪意を打ち砕く信念の勝利。どうせこの時代に生まれたからには、せめてその時を見届けたいものです」
彼らの中でも見た目の若い男トレイは、惜しそうに言った。
「スーパーヒロイックの勝利を信じているのか?」
「もちろんです」
「そうならなかった時はどうする」
「英雄に失望して、死ぬだけです」
ーーそんな馬鹿な!!
それまで少しの動揺も見せなかったガーランドが、うろたえた様子で目の前の端末を操作し、机に拳を叩き付けた。
どうかしたのか? ザガインが訊ねる。
「人形との連絡が途絶えた……」