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英雄気取りのエコーちゃん!!  作者: 増岡時麿
第1部 ライジング
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十七話 VS サクラ



SEVEN< だからさ、流行ってるって理由だけで擦り寄ってきた奴に限って、自分が昔好きだった漫画とか批判しだすわけよ。半端な愛しか持ってないから、にわかって嫌いなのよねー



T.S< へぇ



SEVEN< さっきから生返事多いよ……。ちゃんと聞いてる?



T.S< もう仕事だから、いったん終わりなぁ



SEVEN< あんましイジメないでよ。アタシのかわい娘ちゃんに何かあったら萌えブタラッシュくらわすっゾ



T.S< ほいほい



 チャットアプリを閉じて携帯ゲーム機型の闇玩具をしっかりと握る。

 サクラ・タイテンのS級闇玩具、《機械仕掛けの器用貧乏(モーターサイクル)》は、触れずしてあらゆる電子機器を遠隔操作できる能力を持つ。加えて操作中の物体からも電波を飛ばし、遮断されないならどこまでも広範囲なネットワークを形成し、オート操作も可能。

 「モーターサイクル」とは、バイクのことだが、何故それが名前なのかはよく解らない。付けた本人に聞けば、昔やってたゲームとか観た映画が云々、実際どうだったかは忘れてしまったそうだ。



「……はぁ」



 今回、彼女に課せられた任務は二つ。オージンとエコー、両者と戦闘を行い、それぞれの能力であるスーパーダークネスとスーパーヒロイックの詳細なデータを採取すること。



「働きたくねぇ」



 そんなふうにして、便利すぎる能力を持つが故に、周りから面倒事を押し付けられてしまうことに彼女はうんざりしていた。

 サクラが能力者機構に入ったのは、まだ五つにもならない頃。発足以来なら歴代最年少のダークネス能力者だった。学業においても他とは比類ない成績を残していたし、周囲からの信頼と期待も絶大。

 しかし、それは当人からすれば煩わしいだけで、悩みの種でしかなかった。彼女は類を見ない天才であると同時に、極度の面倒臭がり屋なのだ。



「アー、アー。わたしは統治局よりこの場の防衛を任された者であるー。ダークサイドの意思に背きし反逆者よー。無駄な抵抗は止めて大人しく投降セヨー」



「あ、えっと、昨日は突然でごめんなさい。でも争いに来たわけじゃないんです。無実の人たちを解放してほしくて……。あの、オレ、ビゾオウルさんとちゃんと直接話し合いたいんですけど、ダメですか?」



「ダメです。それを俗に謀反というのですー。問答無用ー」



 死角から、二台の大型車両がエコーに目掛けて突っ込む。常人ならひとたまりもないところだが、エコーは寸前に両手で抑えて防いだ。車体が沈み、浮いた後輪が勢いよく回っている。

 硬さとパワーは及第点。直前で止めた反射神経も申し分ない。サクラはイスを傾け、闇玩具を片手にぶら下げ、スナック菓子をつまんだ。

 運転席に人が乗っていないのを確認して不審に思っているエコーの目の前に数機の偵察機が現れ、一斉に銃撃を放つと、エコーは地面を蹴って後方に跳びながら変身ベルトのバックルを弾いて回転させた。彼女の全身に光が纏う。

 車を盾に攻撃から身を守り、背後に迫る鉄球を高くジャンプして避け、クレーン車の上まで登ると辺りを見渡して誰もいないことを確かめた。

 ーー工場の屋根に球体型のロボットを見つける。わざとらしく「ギクぅ!」と声を拡声器から出した。次の瞬間には、エコーが頭の上に乗っていた。

 ロボットは右腕装備のマシンガンで頭上からエコーを退かすと、素早く下に降りた。



 サクラは送信用のデータをまとめながらふわっと欠伸をする。

 そもそもこんなことをする意味があるのか。スーパーヒロイックが覚醒したのが最近といっても、スーパーダークネスと絶望的な差があるのは以前から予想済みだったのではないか。こんなんどうでもいいわ、と適当に報告を打ち込んでいく。

 本当はこいつをオージンから切り離したいだけだろう。サクラはシンシアのことを頭に浮かべた。



 二つ年下にも関わらず、平気で口答えをする。あの女は自分にも他人にも厳しい。

 どんな幻想を抱いていたのかは知らないが、能力者機構に入ったばかりの頃はその実態の酷さに呆れ果てていた。

 ろくに働かないサクラに我慢ならず、ついには「世の中を舐めているのね」とまで言ったことがある。

 あたしはここに来る前から仕事なんてしょーもないモンだと思ってたからな。本気で世の中に貢献したいと考えてる奴なんか大していねぇよ。社会に対して勝手に期待して幻滅してるお前のほうが甘く見てたんじゃねーの? そう返してからは無駄だと判断したのか、あまり文句は言ってこなくなった。

 貯えは十二分にあるので、とにかく自由な時間、休みが欲しかった。依頼を受ける時、サクラはいつもそれを要求する。

 対峙したエコーとロボット。腕をロケットのように飛ばし、エコーが紙一重でそれを避け、腕を掴み、背負い投げで後方に叩き付けた。



「うわー。ヤラレター」




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