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第七話 五十叩き冤罪と慈善病院の尼僧たち……これが業の報いか


俺はミルナの牧場小屋で、数日を過ごした。


体は回復しつつあった。

神聖魔法の力が、少しずつ体に馴染んでいる。

でも、心はまだ落ち着かない。


「……修行中なのに、こんなに甘やかされてる場合じゃない」


ミルナは毎日、ミルク粥を作ってくれる。

「あーん♡」しながら、巨っきな胸を押し当ててくる。


挿絵(By みてみん)


「もう一人で食べられるってば!」


「昨日も一昨日も、こうしてたじゃない」


「き、昨日も一昨日も……」


一昨日の記憶のないことがじつに心底……って、

それはもういいっ!


「だいじょうぶ、明日も明後日も、

こうやって食べさせてあげるから」


「こ、こんどは明日も明後日も、ですか(汗)」


過去・現在・未来。

三世さんぜにわたってずっと、

こんな天にも昇る気持ちいい地獄の食事が続くのか。


俺は必死に目を逸らすけど、

煩悩はもう限界だった。

このままでは一生、この、性的に気持ちいい小屋から

離れることができなくなる。




もう立って歩けるようにはなってたから、

まずは世話になったお礼にと小屋の修理や雑用を手伝った。


怪我をした牛を神聖魔法で治療すると、

ミルナは目を丸くして、


「すごい、すごい!

あなた、もしかして聖人!?」


と、無邪気に騒いだ。


だが、食事時になるとまた

巨っきな胸をむにゅうっ♡♡♡と押し付けられての

「あーん♡」が……


気持ちいいけど、永遠にここにいたいほど気持ちいいけど。


明日も明後日もこんなふうに甘やかされ続けたら

絶対にダメ人間になるだろ!


苦渋の決断だったが、俺は心を決めた。

翌日に、


「ミルナ……ありがとう。でもそろそろ寺に戻る」


そう告げると、ミルナは寂しそうに微笑む。


「もう少しいてもいいのに……」


俺は首を振る。


「師僧の遺言を果たしたし、

俺も……自分の道を歩かないとね」


そう言って、俺は牧場を後にした。

ちょっと勿体無かったなあ。せめてもう二・三日…

なんて煩悩をいっしょうけんめい、振り払いながら。




寺に戻ると、若い僧が俺を待ち構えていた。


「奴隷、ようやく戻ってきたか」


俺は頭を下げる。


「……お久しぶりです」


若い僧は棒を振り上げる。


「師僧の遺品を勝手に持ち出した泥棒め!

盗んだ証拠はそれだ!」


彼は、俺のふところに突っ込んであった巻物を指差す。


「いえ、これは師僧の遺言で……」


「黙れ、盗人!」


俺は襟首を掴まれ、寺の広間へと引きずられて行った。


たちまち、知らせを受けた僧たちが集まり、

俺を取り囲む。


「奴隷が師僧の遺品を盗んだ!」


「罰を与えろ!」


若い僧が棒を振り上げる。


「五十叩きだ!」


俺は地面に押し倒される。




そして棒鞭が、背中に叩きつけられた。


痛い。

痛すぎる。


十回……二十回……


背中に傷ができている。ズキズキと痛む。

神様たち…助けてくれないのかよ!!?


まあ、神聖魔法を使えばすぐ治るだろう。

けれど、ここで使うのはマズい気がする。

なので痛みに耐え続けるしかない。


三十回……四十回……


魔獣を殺したごうの因果なのか。

牧畜小屋で性的煩悩に耽溺してしまった埋め合わせなのか。


もう痛いというより、重いという感覚しかない。

叩かれるたびに、体が沈むような重い衝撃。


五十回。


棒鞭が止まった。


俺は血まみれで倒れた。


若い僧たちの声が、遠くのように聞こえた、


「もう用済みだ」


そのまま、意識がなくなっていった。




アティリナ教の寺院。

いわゆる、異教ということになる。


ここは貧しい者たちのための慈善病院を兼ねていた。

裕福ではないから、崩れかけた土小屋のような建物だけど、

少なくとも木製の寝台はあった。


そこでは、灰色の法衣をまとった尼僧たちが

病人や怪我人を看病していた。


「フート教の見習いさんね……ひどい傷」


五十叩きで気を失ったあと、俺はどうやら、

寺の外に捨てられたらしい。


下手すればそのまま次の転生に入るところだったが、

誰か親切な人たちが、近くにあったここに

運んでくれたようだ。




夜を待って、俺はこっそりと

神聖魔法で傷を治しておいた。




翌朝に、尼僧が驚く。


「傷が……治ってる?」


俺は苦笑いする。


「フート教の教えでして……」


尼僧たちは俺を

「フート教の聖人? いや、私たちにとっては悪魔?」

と噂しだした。


「悪魔はともかく、聖人じゃないです」


ミルナの胸の感触が腕や脇に蘇ってくる。

修行中なのに……。

こんな聖人、いるわけないもんな。


(第七話・了)

次回第八話 ダメ聖人、あらたなる境地へ!

俺「心を天国に…?」

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