第六話 牛飼い娘のミルク粥で煩悩爆発の危機
魔獣を倒した翌朝、俺は山を下りることにした。
体はまだ少し震えている。
神聖魔法の力が、体の中に温かく広がっているのを感じる。
でも、心はまだざわついていた。
「……パーティに入れって言われたけど、断って正解だったよな」
フート教の修行中だ。
肉を食べるのも、戦うのも、女と関わるのも、戒律に触れる。
パーティに入ったら、すぐに戒律破りになる。
でも……。
「『験の巫女』様の幻視……あれは、悪魔の誘惑だったのか?」
頭に浮かぶ青いビキニの姿。
紫の瞳。
笑顔。
俺は頭を振る。
「だめだ。修行中だ。邪な欲は捨てろ」
そのとき——
視界が揺れた。
神聖魔法の力がまだ体に馴染みきっていないのか、
急に足元がふらつき、森の小道に倒れ込んだ。
「……くそ……」
意識が遠のく。
どれくらい時間が経ったか。
目を開けると、木の天井が見えた。
牧場小屋の中。
牛の匂いがする。
藁布団の上に、俺は寝かされていた。
「……ここは?」
小屋の中で、若い娘が鍋で牛乳を温めている。
金髪の三つ編み。
ボンキュツの体型。
明るい笑顔。
このときは知らなかったが、
ミルナという名前の女性だった。
彼女は俺を見て、目を丸くした。
「目が覚めたの!? よかった……」
俺は体を起こそうとして、痛みに顔をしかめる。
「……俺?」
ミルナが優しく押し戻す。
「山道で倒れてたのよ。
牛が山の草場に逃げちゃって探しに行ったら、
あなたが道端で気を失ってて……
牛に載せてここまで運んで、3日間看病したの」
俺は驚く。
「3日……?」
ミルナは頷く。
「うん。
意識が戻らなくて、心配だった……
熱も高くて、ずっとミルク粥を飲ませてたのよ」
俺は身を起こし、ベッドに座りなおした。
「……ありがとう。助けてくれて。
……君は?」
「ミルナ」
ミルナは照れ笑いする。
「ふふ、またお腹すいてるんでしょ? はい、あーん♡」
彼女はスプーンで粥をすくい、俺の口に運ぶ。
「ま、待って! 自分で食べられるよ」
「今さら恥ずかしがらなくても。昨日も一昨日も、
こうやって食べさせてあげてたのよ?」
「き、昨日も一昨日も……!?」
記憶のないことがすごく悔しい。
そんなこと考えてる間にも、
ミルナの巨っきな胸が、俺の腕に当たっていた。
柔らかい。
温かい。
たっぷりの乳製品で育った肌の、いいにおい。
「ちょっ……近い近い近い!」
「だから、昨日も一昨日も、
こうやって食べさせてあげてたんだってば」
「き、昨日も一昨日も……!?」
記憶のないことが真剣にものすごく悔しい。
俺の心臓が、ドクンドクンと高鳴る。
「……修行中だ、俺」
自分に言い聞かせるけど、
柔らかい感触と甘いにおいのダブルパンチで
煩悩は爆発寸前だった。
ミルナは優しく微笑む。
「ゆっくり食べてね。
体が弱ってるから、消化のいいミルク粥が一番よ」
俺は粥を飲み込む。
……温かくて、甘くて、優しい味。
前世では、こんな優しさに触れた記憶がなかった。
「ミルナ……ありがとう」
彼女は頰を赤らめて、笑う。
「ふふ、まだ食べるでしょ? はい、あーん♡」
胸が、また当たる。
俺は必死に目を逸らす。
「修行中……修行中~っ……」
でも、頭の中はもう、ミルナの胸の感触でいっぱいになってた。
(第六話・了)
次回第七話 おそろしき冤罪!
俺「神様たち…助けてくれないのかよ!!?」




