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勇者パーティー②

 朝の空気が好きだ。


 どこか懐かしくて、感傷的になって……


 何かが、始まる気配がするから。


 僕は勇者。


 世界を救うために、旅をしている。




「やぁ、おはよう。そしてよろしく。アート君」


「よろしくお願いします!」


 朝。


 馬車の前で再度みんなと顔合わせをする。


「ふん。ガイドなんていらないと思うけど」


 魔法使いが悪態をつく。


「フハハハ!我は大歓迎だぞ!強い奴は大好きだ!」


 剣士は豪快に笑い、


「よ、よろしくねアート君……」


 聖女は僕の後ろに隠れながら遠巻きにちらちらとアート君を見ている。


「それじゃあ皆さん、乗ってくださいな」


 御者さんに言われ、顔合わせもそこそこに僕たちは馬車の荷台に乗り込んだ。


 荷台のほとんどは荷物に占領されていて狭いが、これはこれで仲が深まりそうで悪くないと僕は思う。物理的に距離が近くなれば心の距離も近くなるものだ。


「はぁーあ。ただでさえ狭いのに一層狭くなっちゃったじゃない」


 ……まぁ、そんなふうに考えるよね、君は。


 でも大丈夫だ。アート君はいい子だし、魔法使いも口だけのいい子だ。


 でも……せっかくだ。僕は勇者なんだし、勇者らしいトーク回しでもしようじゃないか。


「みんな、僕からゲームの提案が……」


「私パス。寝るから起こさないでね」


 魔法使いが帽子を深くかぶる。


 …………。


 うーん。

 あ、そうだ。


「今回のゲームは、魔法当てゲーム!僕が使う魔法を当てて……」


「やれやれ。私の出番だわね」


 魔法使いが目を覚ます。


 ふふふ。単純じゃないか。


「僕も一応魔法剣士なんで負けないですよ!」


 アート君もなかなかに乗り気である。


「我は一切知らないが楽しそうだし乗った!」


「わ、私も……簡単なのなら……」


 よし、みんな乗り気だな。


「じゃあ最初の魔法は……」


 馬車は、順調に走っている。





「この魔法は?」


 僕はバックから紙を一枚取り出すと、ぎゅっと握った。


「え?なによそれ……」


 魔法使いが不思議そうな顔をする。


 剣士はそれを見て、


「筋肉だな!!」


 と言った。


「剣士!正解!」


 僕が剣士を指さす。


「はぁ!?何よそれ!ていうかなんで問題にちょくちょく筋肉が混ざるのよ!」


「まぁいいじゃないか。筋肉も魔法も変わらないよ」


「はぁぁぁぁあ!?!?全然違うんですけど!!!!」


「皆さん、到着しましたよ」


 その時、馬車が止まった。


「あら、ずいぶん早いじゃない」


 魔法使いが真っ先に馬車から降りる。


 オキイ街まではあと四日ぐらいかな?


 僕達は、一番最初に休憩する村に予定よりもかなり早く到着した。


 予定では日が沈み切ってからの到着だったはずなのに、今は日がぎりぎり沈んでない程度の時間だ。


「馬の調子が良いようでしてねぇ。かなり早くの到着となりました」


 そう言われてみると確かに、いつもより馬車が何となく速い気はしてた。


 馬の調子がいい……ね。


 …………。


 実は、僕もすこぶる調子がいいんだ。


 今朝起きてから、明らかに体の調子がおかしい。コンディションが”良すぎる”んだ。


「ねぇ、剣士……」


「うむ。そうだな」


 何かが、起こっている。


 ただ、それが具体的に何なのかは僕にはまだわからない。


 今のところは”調子がいい”程度で済んでいるし、いいことではある。が、この現象がどう転ぶかはわからない。


「最悪の場合、誰かからの攻撃な可能性がある。気を付けて」


「そうだな。他の三人にも……」


 僕達が三人の方を見る。


「あんた良い筋してるわね!今気分がいいから魔法をちょっとだけ教えてあげるわ!」


「いいんですか!?やった!!」


「うぅ……酔っちゃった……」


「大丈夫?私が酔いを醒ます方法教えてあげるわよ!」


 魔法使いは今、やけに上機嫌である。

 恐らくだが、体の調子が直接メンタルにも関わってくるからだろう。


「魔法使いには教えなくていいか。そっちの方がよさそうだ」


「うむ。そうだな」


 僕の提案に剣士が同調する。


 ここまで機嫌が良くて怒ってない魔法使い、初めて見たかもな。


 まぁ狭い馬車でぎゅうぎゅうの状態なんてストレスがかかって当然ではある。


「いたぞ!勇者様たちだ!!」


 その時、一人の村人が声を上げた。


「む……またこの時間が始まるのか」


 人当たりのいいはずの剣士が難色を示す。


 この時間とは……


「キャー!勇者様よ!こっち向いてー!」

「魔法使い様ー!」


 僕達一行を、人々が取り巻く時間。


「この時間はいくら我といえど苦手だ……」


「まぁ仕方ないよ、僕たち勇者だし」


 僕が剣士の背中をポンと叩く。


「見てなさい!炎魔法!」


 ボウッという音を立て、空を炎の鳥が飛んで行った。


「「「うおおおお!!!」」」


 その様子に歓声が上がる。


「まぁ、今日の対応は魔法使いが一手に引き受けてくれそうだね」


 僕達は魔法使いをおとりにして、宿の方へ向かっていった。


 後ろからはよく歓声が聞こえてくる。本当に今日は機嫌がいいな。


「それじゃあ僕は魔法使いを回収してくるよ。みんな、少し早いけどおやすみ」


「おやすみなさい」


「おやすみ!」


「おやすみです」


 この”調子がいい”違和感。


 これが、良いものなのか悪いものなのか。

 見極めないとな。

最後まで読んで下さりありがとうございました!

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