勇者パーティー
「勇者の動向は?」
額から角をはやした男が隣に立つ男に聞く。
「私の駒が確認した限りではサルフェの洞窟に送った別の駒の討伐を行ったようですねぇ……」
隣の男は後頭部に角をはやしており、ねっとりとした独特の喋り方をしていた。
「そうか……残りの駒はいくつだ?」
「周辺の駒はあと二十四個ですねぇ」
「そうか。じゃあ……俺が出るとしよう」
魔王軍・然の王アベッキ。
「気を付けてくださいねぇ。勇者パーティー以外にも強い個体が一つありますので……」
魔王軍・アツリヤ。
不穏な影が魔族領で動いていた。
ソーラの一件から数日後。
街の食堂で食事をとっている最中。
「久しぶり」
聞き馴染んだ声がした。
僕の隣に立った少女を、僕はよく知っている。
「ティシー」
ソーラのパーティーの剣士、ティシー。
「今更僕に何の用だ?」
僕はティシーを睨みつける。
あの時、静かに頷いたのは彼女だ。
一体どんな面を下げて僕の前にやってきたのか見当がつかない。
「……君も知ってるでしょ?今の私たちの惨状」
ティシーが静かに言う。
あぁ、当然よく知っているよ。
ソーラは先の依頼書の件だけでなく、シンプルに依頼達成率が低下したことでその評判が地の底まで落ちていた。
「君が居なくなってから散々だよ。まぁ、悪いのは私たちだけど」
ティシーがため息をつく。
「君はすごいね。オークを何回も単独撃破してるんでしょ?それに、勇者パーティーにも顔が利くとか」
「ティシーには関係ない」
僕が冷たく言い放つ。
「……そうだね」
ティシーが店の奥の方を見る。
「店員さん、私にもモーニングを」
ティシーが僕の前の席に座った。
「で、何の用?」
僕の質問に、ティシーは寂しそうな顔をして、
「忘れちゃった」
と笑った。
その目には、うっすら涙が浮かんでいる。
「調子に乗っちゃダメなもんだね。あーあ」
「どこですれ違ったのかなぁ……」
僕は何も言わずに皿の上のパンを引きちぎる。
これ以上、何も話す気は起きない。
「おーいアート君!」
遠くから勇者の声がした。
「この荷物、運ぶの手伝っておくれよ。後ででいいから」
勇者は大きなバックを地面に引きずっていた。
「はーい!」
僕は急いで食事を済ませる。
そして、静かに席を立った。
「じゃあね」
ティシーが手を振る。
「…………」
僕は黙って、何も返さなかった。
「勇者さん、こんな大きい荷物何が入ってるんですか?」
僕が勇者の荷物を一緒に持ちながら聞く。
「いやぁごめんね、みんなが色々入れちゃってるんだ。野宿の道具とか、剣士の鍛錬道具とか、魔法使いの魔導書とか……」
ずっとこの大きな荷物を持って移動してるのか……道中は馬車で移動しているらしいが、流石にこれには開いた口が塞がらない。
絶対に半分以上はいらないものだろう。
「僕もこんなにいらないと思うんだけどねぇ……」
勇者の表情にはかすかな苦悩が見えた。
なんていうか……人には人の苦悩があるもんだな。
「ていうか、荷物をまとめてるっていうことはつまり……」
僕が聞く。
「うん、そうだよ。僕たちはこの町を離れる。次はオキイ街という場所に向かうんだ」
「オキイ街!僕、そこ故郷ですよ」
オキイ街かぁ。懐かしいな。
オキイ街はこの街よりも数段小さい街で、僕や……元パーティーメンバーたちの出身である教会の孤児院があるところでもある。
馬車だったら大体五日ぐらいの場所だろうか?懐かしいなぁ。神父さんは元気だろうか。
「おっ、じゃあせっかくだしオキイ街までついてくるかい?旅は楽しい方がいい。臨時ガイドでもしてもらおうかな」
勇者の提案に、
「ぜひ!」
と僕は快諾した。
あの憧れの勇者パーティーと知り合いになっただなんて聞いたら神父さん喜ぶぞ。
まぁ、神父さんのことだ。僕が顔を出しただけで十分喜んでくれるだろう。
二年前に孤児院を出た時以降一回も帰ってなかったしな。ちょうどいいや。
かくして僕は、少しの期間だけ勇者たちと行動をともすることになった。
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