元仲間②
さて、短期決戦に持ち込んだからにはグダグダしている暇はない。
炎の燃料にだって限りはある。そのうえ、炎がある明るいうちに倒さないとだめだ。
僕の調べだと、ヴィーユの獣に弱点はない。
全身を覆う分厚い体毛は剣でなかなか切り裂くことができず、体内のセンサーで位置を把握するため多くの生物の弱点となる目がなく、指という器官が存在しない。
戦闘、それも対剣に特化するためだけに作られた生物だ。
さて、いったいどうしたものか。
「うおおおお!!!」
僕は必死に剣を振るう。
しかし、分厚い体毛に阻まれて攻撃が肉体まで届かない。
それでも僕は必死に剣を振るい続ける。
その時、少しだけ切ることができた感触があった。
やっと攻撃は通ったが、このペースでは……
パンッ
僕の手元に攻撃が当たり、剣が遠くに投げ飛ばされる。
マジか。
せっかく本当にちょっとだけ良い兆しが見えていたのに。
こうなったら……したくなかったんだけど、仕方がない。
「炎魔法」
僕が炎を出現させる。
そして、ヴィーユの獣の方に投げた。
すると当然、当たった部分が燃える。
「ギェエエエ!!!」
その炎は徐々にヴィーユの獣の体を包んでいく。
全身が長い体毛で囲まれてるからな。よく燃えるだろう。
こうなったらあとはこの暴れまわるヴィーユの獣から逃げるだけだ。
「ギャ!ギャア!!!」
暴れまわりながらも僕を追いかけてくるヴィーユの獣。
僕は風魔法を駆使しながら全力で逃げる。
しかし、距離は徐々に近づくばかり。
これではすぐに追いつかれる。
でも逃げろ。
今は前だけを見て、逃げ……
「あっつ!!」
僕のすぐ後ろまでヴィーユの獣が迫ってきているのが分かる。
あーやっぱり無理だったか。
これは、死……
「よくここまで来た!アート!!」
一度だけ聞いたことがある声がした。
「ドラァ!!」
一瞬、僕の真上をものすごい速さで何かが通り過ぎる。
「剣士さん!!」
「ハッハッハー!もう安心していいぞ、アート少年!」
剣士が豪快に笑う。
やっぱり僕は運がいい!勇者パーティーの剣士がいるんなら百人力だ。
「気を付けてください!こいつは……」
燃やしてしまったせいで暴れている。
そう言おうとしたとき、
「ん?何を気を付けるんだ?」
僕が後ろを振り向く。
その時、すでにヴィーユの獣は上と下でぱっくりと分かれていた。
……圧倒的だな。
これが勇者パーティーの剣士の力。
ここまでくるともう……恐ろしいな。
「しかしアート少年、なんでお前はこんなところにいるんだ?」
剣士の問いに僕はあることを思い出す。
「そういえば、この洞窟に関する嘘の依頼を送ったやつがいるんです。そいつを……」
「そいつってのはこいつのことかな?」
このさわやかな声……
「勇者さん!」
「やっ。随分と速い再会だね」
洞窟の入り口の方から、勇者と魔法使い、そして前会ったときはいなかった聖女が居た。
そしてさらに、もう一人……
「リーダー……」
勇者に首根っこを掴まれて引きずられている元リーダーがいた。
「明らかに挙動がおかしかったからね。怪しいと思って捕まえたんだけど……知り合いかい?」
「ま、まぁ……一応……」
リーダー?なぜこんなところにいるんだ?
挙動がおかしいって言うことは、もしかして……
「あぁ、そうだよ。俺がやったんだ」
リーダー……いや、ソーラは悪びれるどころか開き直った感じで言う。
「……死んだら、どうするつもりだったんだ?」
でもソーラ、お前は昔はこんな奴じゃなかったはずだ。
何か事情があるに違いない。きっとそうだ。
僕はパーティーを追放された。でも、幼馴染の情はある。
大丈夫だ、きっとソーラにも考えが……
「さぁ?」
ソーラがすっとぼけた表情をする。
「…………」
僕はもう声すら出ない。
「そんなことよりもお前、パーティー戻って来いよ。お前が抜けてから大変でよぉ。そうだ、ちょうどこの洞窟の奥に荷物がある。取って来いよ、昔みたいに」
いや、まさか……えぇ?
なんて言うか……呆れた。
「いや、戻んないよ」
「は?てめぇ俺の指示が……」
「うるせぇよ」
僕はソーラを見下ろす。
昔は、強くて尊敬できる奴だったんだけどな。
何がソーラを変えたのだろうか。
「それじゃ、この子は警備に突き出しとくとしますか」
勇者がソーラの処遇を決める。
「うむ。そうするとしよう」
皆が一件落着の雰囲気を醸し出す。
ソーラ、お前はこんな奴じゃない。
二年の間、ソーラの身に何があったのか、いつか聞くことにしよう。
でも今は、変わってしまった関係を悲しむことしかできない。
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