元仲間
冒険者ギルドにて。
僕はゆっくりと依頼を選んでいた。
さて、今日は何の依頼を受けようか。
今の僕ならCランクレベルのモンスターなら討伐することができる。
となれば、引く手は数多だ。
このギルドに僕を笑う人間はもういない。
それが肌で分かるわけではないが、何となく心地が良い。
どの依頼がいいかな……ん?
サルフェの洞窟に潜むゴブリン退治……ランクD……?
確か、サルフェの洞窟は危険度Bの洞窟じゃなかったか?
記憶違いかもしれないが、気になるな……。
よし、今日はこれにしよう。ランクもDだし軽めでちょうどいい。
僕は受付の人にこの依頼書を渡し、サルフェの洞窟へ向かった。
「ククク……よし、やっぱり狙い通りサルフェの洞窟に行ったな」
ソーラがほくそ笑む。
「お前はよく依頼書を読むタイプだからな。気になって依頼を受注すると思ったぜ」
「さぁ、お前が”なにをやった”か調べさせてもらう」
ソーラが冒険者ギルドを出たアートの背中を追いかけた。
うん。やっぱりおかしい。
サルフェの洞窟がDランクなわけがない。
僕はオークと対峙しながら考える。
Cランクのオークに遭遇するのはもう三回目だ。つまり、サルフェの洞窟周辺は最低でもCランク以上の危険性をはらんでいる。
そして、洞窟というものはモンスターがよく潜んでいるのでランクが一、二個上がるのが普通だ。
つまり……誰かが意図的に”偽の依頼”を貼った。
誰がやったかは分からないが、相当に悪質ないたずらだ。ギルドにはあとで報告しとかないとな。
「よいっしょぉ!!」
僕は飛び上がり、オークの首を掻っ切る。
その繰り返しなのに、僕は段々自分が強くなっていくのが分かった。
やっぱりおかしいな。僕の体。
まるで無限に成長するような感覚だ。
しかし、詳細は僕にも分からない。
そして僕は、森を抜けた。
「……あった」
サルフェの洞窟。
ぐおぉおおおお……ぐぉおおお……
中からは、外からでもわかるほど大きな獣のいびきが聞こえる。
強い。確実に。
引き返すべきだ。絶対に。
でも……
今の僕なら、いけるんじゃないか?
僕は洞窟に一歩足を踏み入れる。
──この選択が、間違いだった。
「……静かだ」
当然、洞窟の奥から鳴り響くいびきの音は今でも健在である。
しかし、それ以外の音が一切しない。
通常洞窟にいたくさんいるはずの動物や、洞窟に隠れている魔物の姿一匹も見つけられない。
おかしい。異常だ。
これは依頼書云々じゃなく洞窟としての異常。
なんにせよ、奥まで潜ってどんなモンスターが潜んでいるか確認するまでは帰れないな。
僕は周囲に警戒しながら洞窟の奥へ向かう。
まぁでもこの洞窟の危険度はBランク。負けそうになったら逃げ切れる程度のモンスターだろう。
ただ、この静けさ……最悪の場合、モンスターよりも恐ろしい存在が潜んでいるかもしれないな。
例えば、魔族……みたいな。
いや、さすがにそれはないな。ここら辺は魔族領からほど遠い。魔族がいるわけないんだ。
大丈夫。きっと……
「あ」
僕の目の前には、闇に紛れるような黒い塊があった。
これ、避けられ……
ビュンッ
ドンッ!!
僕の体が洞窟の壁にぶち当たる。
「ガハッ……」
この黒い巨体、そしてオオカミのような姿……知っている。
「ヴィーユの獣……!」
ヴィーユの獣は魔族じゃないが、魔物だ。
魔物は魔族の手下のモンスター。その中でもヴィーユの獣は……
Aランク。
「判断、間違えたかもな……」
なんて軽口をたたく暇はない。
逃げることは……無理そうだな。
やるしかない。
ビュンッ!!
攻撃を避けながら打開策を考える。
このまま攻撃されて逃げてを繰り返してもジリ貧だ。体力が少ない僕がやられるに決まっている。
逃げ出すのも得策じゃない。
パーティーであれば仲間と交互に牽制をすることでじりじり退散をすることができるが、僕は一人。まさかパーティーを組んでいない弊害がこんなところで出るなんて。
どうする?何かいい作戦は……
ブォン
僕の左半身に重い一撃が当たる。
あーこれ、僕の体力が尽きる前に終わるかも。
急がないとな。
作戦を考えろ。何か少しでも現状が良くなるものを。
とりあえず、今一番怖いのは闇に潜むヴィーユの獣の攻撃だ。
これは、僕にも少し不利になるからやりたくなかったんだけど……。
ボウッ
僕は自分の荷物を炎でまとい、周囲にぶん投げる。
「これで明るくなったな」
ただ、こうすると洞窟内の酸素が減ってしまう。
かなりの短期決戦に持ち込む形となったな。
もう考えている余裕もないかもしれない。
さぁ、どうしようか。
「おいマジかよ……」
ソーラが唖然として口を開く。
「あのヴィーユの獣の攻撃をほとんどかわしてやがる……」
そして、ソーラは確信した。
「あいつ、やっぱ何かもってやがんな」
ソーラの顔が憎しみに代わる。
「このまま死にやがれ」
そして、ソーラは洞窟から出る。
その時、ちょうど誰かと肩が当たった。
「ってぇ。誰だお……まえ……」
ソーラの真横には、身長が二メートルはある大男が居た。
「はっはっは。こんな広い場所でぶつかっといて喧嘩を売ろうとするとは、大した根性だな」
そこに居たのは、勇者パーティーの剣士。
「残念だが、お前には興味がわかないな」
そして、剣士は洞窟の奥へ歩きだした。
「……死ぬかと思った」
ソーラがその場に座り込む。
その様子は、かつて”天才”と呼ばれたパーティーのリーダーであることを忘れてしまうほどだった。
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