7
扉を開けると頭にツノを二本生やし、山田の身体の三倍はありそうな体躯、そして右手に斧を構えた魔物がいた。
「よかった。今回は普通のボスみたいだね。でもグランドミノタウロスか」
「丁度いいですね。前回のリベンジと行きましょう」
基本的にコイツとソロで出会ったら迷わず逃げろが鉄則だが、今この場には僕がいる。
麗奈がどこまで強くなったか、試すにはいい機会と言えるだろう。ここでコイツを倒せるか、否かでSランクの素質があるかどうかが決まる。
「行きます!!」
麗奈は掛け声と共に足元を蹴り上げ、ミノタウロスの背後へと間合いを詰める。
魔物と戦う際のセオリーとしては背後を取るのは常識だ。しかし、A級以降のボスの場合それが悪手となる場合もある。
「ブオオオオオオオオ!!!」
「……っ!?来ましたね威圧。前回はこれで怯んで動けなくなりましたが、今の私は前とは違います!」
麗奈はミノタウロスの威嚇に怯むことなく、何十条もの刺突を繰り出す。
麗奈の剣技は綺麗だな。前回も見たけど的確に急所を狙いに行ってる。しかし、火力が足りないな。
ミノタウロスは麗奈の急所を狙う刺突を上手く躱しながら、反撃を繰り出す。
今の所、五分五分って感じだな……
「やはり火力が足りませんか……ですがこれならどうです?」
麗奈の細剣の周りに光の粒子が集まりだし、剣先へと灯る。
「はぁぁぁぁあ!光技・牙突」
麗奈が繰り出した剣技は見事にミノタウロスの胸に風穴を開けた。
「はぁ。はぁ。まだ立ちますか……」
ミノタウロスは更に雄叫びを上げ、憤怒した。
そのまま頭を下げ、一直線に麗奈の目掛けて突進し、麗奈の身体を壁へと吹き飛ばし、同時に細剣をも破壊した。
「かはっ……」
「……っ!?麗奈!!」
山田が麗奈に駆け寄ろうとするが、手をこちらに向け来るなと阻まれてしまう。
「……まだ、やれます」
「くっ……。仕方ない、受け取れ」
山田は異空間から、細剣を取り出し、麗奈へと投げつけた。
麗奈はそれを上手に受け取ると、目を輝かせ、胸に持っていき抱きしめた。
「綺麗……。ありがとうございます」
鞘から抜刀し構えを取る。
「これが、最後、です。私は、お前を超える!!」
麗奈は足元を蹴ると同時に違和感を覚えた。
「なに、これ……力が漲る──」
その刹那──麗奈の何十いや、何百と言ってもいいだろう刺突がミノタウロスの命を刈り取った。
「や、りまし、た……」
ミノタウロスが魔石となると同時に、麗奈は意識を手放し、山田は、麗奈が倒れる前に、縮地で移動、そのまま抱き抱えた。
「おっと。よく頑張ったな。麗奈」
♦︎♦︎♦︎
「……っ!?いったぁぁ……ここ、私の部屋?」
目を覚まし辺りを見渡すと、そこは見慣れた光景だった。
「おはようございます。お嬢様。お身体の方は如何でしょうか?」
「おはよう。まだ身体中痛いけれど、傷が見当たらないわね?」
「そうですか。ご無事で何よりです」
ミノタウロスを倒した辺りまでは覚えているのだけれど、その後の記憶がない。
「……っ!?私の剣は!?」
「そんなに焦らなくても、こちらにございますよ」
はぁ。良かった……。これだけは無くせない。
奏くんからの初めてのプレゼント……ん?これは貸してくれたの?どっち!?
「そう言えば奏くんは!?」
「お嬢様、感情が大忙しですね。山田様が運んで来てくれましたよ。血塗れのお嬢様を見た時は屋敷中が大混乱でしたが」
「そっか。奏くんが……」
麗奈はメイドから細剣を受け取ると、それを大切そうに胸に抱えた。
「あ、それと、山田様から伝言が」
「……っ!?なんですの!?」
「…………お前はしばらく外出禁止!!だそうです」
「そ、奏くんのばかぁぁぁぁあ!!!」
でも、私リベンジできたんだ……全部奏くんのおかげ。
恩を返すとか言っといて、また増えちゃった。返す宛もないのに、増える一方ですね。
ふふ。まったくなぜでしょう。この細剣を見てると胸がほわほわする。
この細剣のせいですかね?白を基調にしてあって所々金色の模様がついていて、とても綺麗。
「こほん。お嬢様。伝言はお伝えしましたので、私は失礼致します」
「あ、うん。ありがとね」
奏くん今頃なにしてるんでしょうか……。
♦︎♦︎♦︎
麗奈が目を覚ます少し前─
「はぁ。めんどくさっ。転移」
山田は、麗奈を屋敷に無事送り届け、再度先程のA級ポーターの最深部へと足を運んでいた。
「やぁ、お待たせしたかな?」
『お、本当に戻ってきやがった』
「ちゃんと戻ってくるって言ったじゃん。せっかく彼女を見逃してくれたんだ、僕だって約束を破る訳にはいかないからね」
麗奈が意識を手放した後、コイツは現れた。元からそこに居たかのように。
狙いは麗奈だったみたいだけど、僕のが強いよと話したらすんなり納得してくれた。
「それで?君はなんで麗奈を狙うのかな?」
『あ?俺はよく分からねぇが、あれに会いてぇ奴が居てな。俺はそれの橋渡し役ってわけ』
「なるほど。ちなみにその人のお名前は教えてくれたりするのかな?」
『そうだな。俺に勝てたら教えてやるよ』
そう言った瞬間、目の前からソイツは消えた。
一瞬で山田の背後へと移動。そして首元に短剣を突き刺し──
『なっ!?まさかコイツを止められる奴がいるとは……しかも素手だとぉ?てめぇ、何者だぁ??』
「結構速いんですね!僕ですか?山田ですよ?そう言えばあなたの名前も聞いてませんでしたね!支障がなければ聞いても?」
『はっ!山田だぁ?山田……山田……て、てめぇもしかしてあの山田 奏か!!』
「あの?あの山田かはわかりませんが、山田です」
なんでこの人ぷるぷるしてるんだろう?
『は、はは。こりゃ拾いもんだぜ!俺は李 子軒。ランキングは七位。てめえを倒して俺様が一位を貰うぜぇ!!』
そして、李は先程よりも速く動き、山田へと無数の斬撃を繰り出した。
「あぁ。通りで、なんで中国語なのかと思えばそちらの方だったんですね」
山田は李の無数の斬撃を気にも止めず、両手で捌いていく。
『ち……。なんでコイツこんな余裕そうなんだ。クソったれ。全然攻撃が当たらねぇ』
「あのぉ。そろそろ反撃してもいいですよね?」
なんか疲れたし、もう帰りたいんだよね。
この人殺す気で来てるみたいだし、ある程度は仕方ないよね。うん。
山田はそう言うと、異空間から刀を取り出し、そのまま軽く李へと刀を横に振るった。しかし、それだけだ。彼からすればただ刀を降っただけ。
李は短剣でガードをするが、勢いを殺しきれず、身体を仰け反らせた。
『ぐっ!?』
「あれ?意外と弱いんですね……ちょっと残念です。そろそろ帰って寝たいので、少し痛いかもですが我慢して下さいね」
『くそが!!舐めやがってクソガキがぁぁあ』
李が山田に向かって突っ込んで来た所で、短剣を弾き、そのまま逆袈裟斬り、そして李の真後ろに転移し肺の辺りを突き刺した。
『かはッ……く、そ……』
「んーちょっとやり過ぎたかな?まぁ頑丈そうだし、大丈夫かな?それじゃ」
あー疲れたぁ。さっさと帰ろう……あっ!!狙ってる奴の名前聞くの忘れてたァ……
まぁ次会った時にでも聞けばいいか。帰ろ帰ろっと。
♦︎♦︎♦︎
山田が居なくなり、少し経った頃、一人の女がコツコツとヒールの音を響かせながら李に近づき言った。
「あらあら。派手にやられちゃって。可哀想に。ふふ。」
『……て…め……さ……さと…』
「ふふ、回復してほしいのかしら?肺を刺されて上手く話せないのね?でもダメよ。貴方はここでおしまい。それじゃさよなら」
胸の辺りからおびただしい量の血を流す李に対して、それだけ言うと、女は指をパチンと弾いた。
『ま……て……』
指を弾くと同時に李の身体は炎に包まれていき、激しく燃え上がった。
「まぁ収穫もあったことだし、良しとしましょう。まさかあの時の邪魔な男が山田 奏だったなんてね。ふふふ。まだまだ楽しめそうね」
ここまで読んで頂きありがとうございます!
誤字脱字など御座いましたらコメント下さい。
「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです