世界の所感
私は思った。
出会う場所が、少し違っていれば。そうなら、どんなに幸せだっただろうかって。
でもそれは、自分が不幸だという宣言。
叶わない。その現実が私を襲った。
それでも。それでも、諦めきれない。私がボロボロになっても、愛し抜くんだって。
くれたから。あの人から受け取ったのだから。
この愛の果てが、わからない。それでも、身を捧げる。
わからないのに、捧げる。人生で、経験のないこと。
僕は思った。
彼女の人生を彩りたいと。
色々な経験を、二人でしたかった。広い世界を見せてあげたかった。
内気で、好きな話になると、前のめりになる彼女が愛しかった。
献身をくれた。彼女のためなら、覚悟が出来る。
覚悟とは、愛に目覚めることだ。
彼女は、作家になりたかったことがあると言っていた。
作家への距離は、僕のほうが近い。経験が多いのだから。
そして、彼女を愛している。
だから、僕の人生を読書してほしかった。
二人で一組。そうなると、彼女も作家だということになる。
僕が作家志望。彼女が、その傍ら。それは、彼女も作家であることを意味する。
そして、僕も、彼女の人生を読書したい。
幸せになってほしい。生きる意味を見出してほしい。色々な幸せを体験させてあげたい。
ああ。
愛していた。愛している。
私は思った。今日、彼と会う。どんな顔をすればいいのだろうか、と。
彼は私の事を愛している。それは、傲慢だと思われるかもしれない。
でも、わかるの。彼は私を愛しているって。その事が、違和感なく言える。
そんな不思議なのに、彼と会うのは緊張する。
普段の彼が見たい。私はワガママ。
ふふ。
ああ。
愛しているのか。
彼との距離が近い。
私が口に出す。
「ねえ、どうして自分を押し殺すの?殺した先に未来があるの?」
「君の未来がある。そして、君も押し殺している」
「お互いに殺しあって、未来があるというの?」
「君の幸せがある」
「幸せなんかじゃない!!」
私は怒った。私が欲しいのは。私が欲しいのは。
「貴方と一緒にいたい」
「君と一緒にいたい」
「……同じ……」
「愛してしまった」
「愛に意味はあるの?」
「あると信じている」
「……もう、いい。もういいの。私、帰ります」
不貞腐れる、私。彼は私なんかより、愛とやらを優先するんだ。
「私と、愛。どっちが大事なの?」
「……」
彼は答えない。でも、辛そうな表情をしている。
わかってる。彼が愛してくれているって、わかってる。
お互いに愛し合っているのに、どうして殺しあわなければならないの。
愛なんて、いらない。彼の愛が、ほしい。
愛が、欲しい。彼の愛を、確かめたい。
ふと、気づく。自分を客観視。
必死になっている。愛にしがみついている。
彼を……。彼の愛が……。
そんな時、彼が口に出した。
「結婚してくれ」
いきなり。なんでいきなり、そんなこと言うの。
愛が大事なんでしょ?私より大事なんでしょ?
だったら!!だったら!!
「しない!!私は苦しいの!!私だけを見てよ!!そんなこともしてくれない貴方なんて愛せない!!愛してよ……」
涙が零れる。こんなに人に向き合うなんて、思ってもみなかった。
でも、きっと私は選ばれない。
愛に、勝てない。
お互いに、手を伸ばせば届くのに。それなのに。
「……わかった」
彼は、何か覚悟を決めたような顔をした。
「通所するのをやめる。それで、君を愛せるのなら。君のためになるのなら」
「ダメ。貴方の邪魔したくない」
ふと、言葉が出た。私の性格。引いてしまう。
「黙っていろ」
彼は私を説き伏せた。私は、何も言えなかった。
それでも、私は口に出す。
「貴方の足を引っ張りたくないの。貴方の努力を壊したくない」
泣いている私。そして、気づいた。
本心では、私を大事にしてほしい。でも、私は彼の幸せを祈っていた。
そうか。
これが、愛なんだ。
だから、彼はあんな態度を取ったんだ。
これが……。
そして、この人にはそれがわかるんだ。
だったら、一つしかないじゃないか。
「結婚します」
「ありがとう」
「愛しています。そして、愛して」
「愛している。愛させてくれ」
そう言って、彼が抱きしめてくれた。
幸せかって?
それはね、私だけの秘密。
色々なことが出来る。
明日は、どんな世界を見られるのだろうね。